100話 新たな危機の予感
こいつらに休みは無いのか・・・
まぁ、無いですね。
エリナとミカエラの救出任務も終わり少し日が経ち、すでに十一月になり、少し日が経っていた。
どうやら留学というのは本当だったらしく、二学期が終わるまでエリナとミカエラは高校にいるらしい。
つまり、現在も司と同じクラスに二人はいるということである。
「あと一ヶ月は俺の平和が続いてくれるといいの
にな・・・」
司は任務を振り返り、今の自分の平和について考えていた。
「お前に平和が訪れる訳が無いだろ」
司の願いの結果を答えたのは龍だった。
「渡辺・・・という事はまさか何か任務か?」
「ああ、そういうことだ。察しが良くて助かる
よ」
「そ、そんな・・・ば、馬鹿な・・・お、俺の平
和なエリナ様との学園ライフが・・・」
「馬鹿言ってないで空き教室に行くぞ」
とりあえず龍は司を別の空き教室に連れていった。
空き教室には皇気が待っていた。
「皇気も参加するとはな。相当ヤバい任務のよう
だな」
「俺だけじゃないぜ。涼もまた参加する」
「おいおい、最近こういうのばっかりだな」
前回もそうだが、司、龍、皇気、涼の四人が参加する任務のほとんどは危険な任務である。
「で?どんな任務だ?」
「前回の任務で再びテレビだらけの部屋があった
ろ?」
「ああ。確か俺が謎を解いたんだっけな」
実は任務の後、司はテレビだらけの部屋の謎について案を出していたのだ。
「あれはテレビというよりデスクトップだな。見
た目は普通のテレビだが側面のボタンを順番に
押すとデータなどが表示される仕組みだ」
「ああ、その通りだ」
「まぁ、加奈子さんの所で似ているのを見たこと
があるんだけどな」
そう、加奈子の研究室で加奈子がお遊びで作っていたこれに似た物を司は見ていたので案を出すことが出来たのだ。
「あれは凄かった。テレビなのにある順番に側面
のボタンを押すと保管されていた俺のデータが
テレビ画面に浮き出て来たからな・・・」
司は思い出すようにそう言っていた。
心なしか目に光が無かったような気もする。
「そう、司の言っていた案がどうやら正解だった
らしくてな。調査班が試しに一通りやってみる
と一つ引っ掛かったらしい」
「で?何が表示されたんだ?」
何が表示されたか答えたのは皇気だった。
皇気は無駄にためてから答えを言った。
「人工生命体製造計画2と書かれていた」
「人工生命体製造計画2だと・・・!?」
人工生命体、それは司を二度窮地に追いやった存在であり、司のゼロへの因縁の一つでもある。
「詳しくはまだ不明だが、とりあえず人工生命体
が再び造られるということはわかった」
「まぁ、そこで二回も人工生命体を倒している司
に任務が来たってことよ」
「なるほど・・・」
どうやら計画の名前以外はまだ不明らしい。
だが、どう考えても嫌な予感しかないと三人は感じていた。
「それでその計画が行われている場所は何処なん
だ?」
「それも不明だが、片っ端から施設と思われる場
所を調査するしかない」
「まぁ、そのための司だしな」
「は?どういう意味?」
司は不運なのか幸運なのかわからないが、因縁の相手や強敵と出会ってしまう体質なのである。
これはここ最近気づいたことである。
「まぁいいや。で?目星はついているのか?」
「ああ。おおよその目星はついている」
確実とは言えないが、人工生命体が製造されていると思われる場所は何となくわかっているようだった。
「じゃあ、さっそく明日行くから色々と準備しと
いてくれ」
どうやら明日学校を休んで施設の調査に行くらしい。
人工生命体はとても危険な存在であるので、学校を休んでまでも調査に行かなければならないのだ。
「じゃあいつもの装備で行くか」
「え?司のいつもの装備といったら、バスターソ
ードにサブマシンガン、更に魔銃とナイフ三本
だったよな」
「あー、あの無駄に装備して全く使わない武器の
数々ね」
確かに言われてみれば司は装備している武器をあまり使っていない。
使ったとしても一つか二つぐらいである。
「うるせぇな。今度は全部使うよ・・・多分」
「まぁ、そんなこと言うなら涼の方が使わねぇよ
な」
「まぁな。あいつ色々と道具持ってるけどあまり
使っている所を見たことがないな」
涼は前回八岐大蛇のナイフを使っていたが、この三人はその事を知らないので、こんなことを言っているのである。
「とりあえず何時にどこ集合?」
「いつも思うんだけどよ。これってなんか遊びに
行くみ たいだな・・・やってることは物騒だ
けど」
「何を今更言っているんだか・・・」
この三人が会話している様子を遠目から見ると、ただの遊びの約束をしている男子にしか見えないのであろう。
だが、内容はとても物騒だ。
「じゃあ、八時に司の家の前集合で」
「なんで俺の家なんだよ?」
「だってこいつらも行くんだろ?」
そう言って皇気は教室のドアを勢いよく開けた。
すると、聞き耳を立てていたのか、香菜美、由井、ステラ、慶夏が一斉に倒れ込んできたのだ。
「お、お前ら・・・いつから聞いてた?」
「さ、最初から最後までです・・・」
「はぁー・・・残れって言っても無駄だからな。
仕方ない連れてくか・・・」
連れていくと言った瞬間、四人の顔が一斉に明るくなった。
前回置いてかれた三人は余計に明るくなっていた。
「さてと、お前らが付いてくるなら加奈子さんの
研究所に今日行かないとな」
「何故ですか師匠?」
「それは秘密だ」
意味深な台詞を残した司。
ここでチャイムが鳴ったので、それぞれ教室に戻って行った。
その後は普通に授業をこなし、放課後になった。
ーーーーーーーーーー
放課後、司は宣言通り加奈子の研究所に来ていた。
「加奈子さんいるー?」
「やぁ司、久し振り。今回は何だい?」
「加奈子さんが作ったら武器を改良してほしくて
ね」
「今すぐにかい?それは厳しいんじゃないか?」
加奈子がいくら天才ともいえど、出来ることと出来ないことぐらいはある。
そんなこと司も重々承知である。
「ちょっと設定を加えるだけですから大丈夫です
よ」
「ならいいんだけどさ・・・」
司は加奈子にバスターソードを渡した。
果たしてバスターソードの設定をどのように改良したのか。
それは使うときにわかるだろう。
「今回はどんな任務だい?」
「最悪人工生命体と戦う」
「おっと、それは確かに最悪だ」
加奈子は司の因縁を最も知っていると言っても過言ではない。
なので何故最悪かも知っている。
「そういえば加奈子さんは何を作ってるんです
か?」
「今は高性能の義手と義足を作っている。まぁ、
上手くいっていないけどね」
「ふーん」
加奈子の言う高性能がどのようなものかは不明である。
戦闘用なのか日常生活用かなのかすらも不明だ。
だが、司の手足はまだ繋がっている。
それを使うことはないだろう。
「それは凄いですね。俺はまだいりませんけど」
「そうだな。逆に必要となったら大変だ」
少しの間の後、加奈子は真面目なトーンで言った。
「死ぬなよ司」
「ああ。俺も皆も死なないし死なせないさ」
この言葉の意味は司と加奈子しか知らない。
そう、人工生命体の恐怖と強さも・・・
つづく。
今回の解説。
司のバスターソードについて再び。
司のバスターソードは、司の宝具である怒涛雷撃のデータを元に作られている。
怒涛雷撃の能力である破壊の力を50%使うことが出来るので、大体の能力は無効化できる。
バスターソードには認証機能があり、司しか使うことが出来ない。
何を改良したのかは次回以降のお楽しみ。
今回は以上です。




