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持ち寄られる、真理

作者: 奥野鷹弘
掲載日:2017/03/05

『あっ、こんにちわ~。お元気でしたかっ?今日も時間、大丈夫ですかね?』

鳴らされたインターフォン越しに、果てしない笑みを浮かべる二人のおばさんがそこにいる。ためらわず俺は、「あっ、大丈夫っす。」とワントーン高めに返事をし、暖しのぎに椅子に掛かっていた妹の迷彩柄のパーカーを羽織り、靴のかかとを踏まぬように爪先立ちしながら急いで玄関の戸を開けた。

家を訪ねたこのおばさんたちは、真理を伝えるという宗教者だ。


言っておくが、俺は信じてる訳ではない。それはネット社会で、元信者が組織の裏側を暴露に暴露を重ねて信憑性をゼロにしてくれたお陰だからだ。

宗教とは皮肉なものだ。ほんのわずかでもかすかに通じるものがあれば、あとは内容がずさんでも信じきってしまうのだから…。

はっきり言って疑えたのは、この目の前にいる人たちのお陰でもある。自分はそんな大層な答えを求めてないのに、パラパラと部厚い本を開いて、書かれてることを読むだけで、たとえそれが答えであったとしても、実際にその書かれてる内容のままに起きて俺は悩んでいるわけではなく、最終的な結論策でしかなかった。要するに的を得ていなかったの方が正しいだろうか…。

どこも、一番上の方が偉く立派なのだ。その人が云うことは絶対的で、そのほかは光を邪魔をする闇でしかない。気持ちが落ちてしまうだけでも闇扱いする宗教ほど、息苦しい事このうえないと俺は思う。

典型的なのは、目の前にいるおばさん達の組織だと思うのだが、理解はしていないらしい。


さて、いつものようににこやかなのは確かなのだが、今日はヤケにその上を行ってて変質並みに気持ちが悪い。

挨拶も途中ながらもおばさんたちは、いつものカバンから引きずりだすように電子パットを広げ、「さぁ、学びましょうか。」と笑顔で首を傾けた。いや待て、と俺は心で突っ込みながら『聖書』と言われ続けた格式ある本の行方を気にかけた。すると気が付いたのか、「そうなの~」ばかりにニコニコしながら「あら、始めてだったわね~。そうなの~、今度から、このパットで学んでいくのよ~。語文から証明できる文にすぐ飛んだり、多国語までもわかるのよ。それにイメージ動画もついて、どこでも“軽く“そして“便利“に、汚“さず“に学べるようになったの。神様はそこまで、私たちを気遣ってくださってるのよ。」と二人で顔を見合わせて頷いた。


それからの時間は苦痛でしかなかった。神の意思だの、一番に愛するだの、生活すべてに気を付けて楽園に行くだの…。その裏側は虐待で泣いてる子や排斥後にまったくの関わりをなくされることなど、神聖なる書の改善やブラックマネーなんかよりも悪どく腹の虫が収まらなかった。

受け答えも充分にならずに、俺は限界が来た爪先立ちからかかとを強く落とした。

この何年以上も口を効かなくなった弟を始め、まだ未成年な妹や自己中な妹、母の想い、父の気遣いで買ってくれた、一番欲しかった靴。憧れている人が履いていた革靴を、俺は卸したて次の日に踏んだ。「大事にするからね。」と約束の笑顔は、遥か昔の記憶となった。


おばさんたちはその行為を知らずに、玄関窓から差し込む光を見ながら口にした。


「私たちは、誰よりも神の意思を汲んで伝道しています。血の繋がりがある家族とは離れましたが、その代わりに親愛なる兄弟を神は与えてくれました。アナタ様も、神は幸せになることを望んでおられます。どうか、忘れないでくださいね。」


俺は思わず泣いてしまった。二人には、俺が感極まり、神の言葉に誇りを抱いたのだと思い込んだ。そのまま二人は嬉しそうに、「また来ますからね~」と流暢にいい帰っていった。


俺はそのままくずれて、大切な靴を抱え込み、自分をまた責めた。


いつもそれが最期に出て、勘違いされるということを。外に出られなくなったということを。笑顔で出来るだけ別れたいという、わがままをも抱えて………





どちらが、正しいのだろうか

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