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プロローグ
「戯言だ。わしは信じぬ」
男は声を荒げた。手に、思わず力が入る。
「私には見えるのです」
目の前の、フードを目深に被った人物は声を上げた。声は高く張りがあり、自信に満ちているようだ。
「世迷いごとだ、呪いの巫女。キュセスに呪われた者の言など、信じるものか。この国は、キュセスの加護を受けし国ぞ」
「しかし、先ほど申し上げましたとおり、私の読見はこれまで一度たりと外れたことはございません。あなたが、一番身をもって実感していらっしゃるはずです」
男は、ぶるぶるとかぶりを振った。
「ありえぬ、ありえぬ」
言って、手を上げる。
「エドガー」
男の背後で気配が動く。闇に紛れて、痩身の男が立っていた。
「未来が見えると申したな。ならば、自分の死期も見えよう」
「はい。私は、ここで命を落とします」
声は、落ち着いている。
「呪いよ、深くあれ」
深くあれ。
繰り返される言葉。男は肝を冷やした。どうして、死地で落ち着き払える者がいよう。男は一瞬迷った。唇が乾いている。迷って、振り絞るように声を出した。
「消せ」
声がするかしないかのうちに、エドガーは動いた。
呪いの巫女は、唇を歪めて嗤った。
「愚かなことを」
エドガーの耳元で、女は囁くと絶命した。




