第一話 突発
紅く染まった暗闇の中で青年はふと思う。
何故僕はこんなことをしているのだろう?
それは唐突に、突然に湧き上がった衝動。
青年はそれに抗う事が出来なかった。
だからこそ、この惨状だ。
ひっそりと胸に秘めていた殺意という名の感情が、ある事をきっかけに再び爆発してしまった。
日々抑えていたものがこんなにもあっさりと出てきてしまうとは………
これまでの苦労は一体なんだったんだと思ってしまう。
けれど、冷静になってコレを見るとやはり僕は間違っていなかったのだと思い知る。
リビングを見渡せば辺り一面が赤一色。
壁と床に居るのは2つの人間であったモノ。
磔にされた父と、顔が判別不能な母だったモノ。
これは不幸な事故だった。
彼らが唐突に僕に襲い掛かってきたんだ。
そうだ。きっとそう。
だから僕は悪くない。
何故だろうか。
ここはいつもより凄く落ち着く。
今まで隠していた感情の全てを吐き出したからだろうか?
いつもより体が軽いのだ。
辺り一面広がる綺麗な赤も。
右手に持った真っ赤な包丁も。
上げかけた悲鳴を喉を切った事で阻止し、その綺麗な顔を左手で殴り頭蓋骨が陥没したことで漸く事切れたソレも。
両足首を切断し、うごけないソレを持ち上げて壁と両手を包丁で磔にし、腹部には大量のナイフとフォークを刺し、出血多量で事切れたソレも。
その悉くの全てが、僕を安心させてくれる。
とても気持ちのいい空間だった。
今まで一度しか感じた事のない晴れやかな気分。
「ふ………、くふ…。ふふふ………」
どこからか笑いが込み上げてくる。
とても気持ちがいいんだ。
これを快楽と呼ぶのだろうか。
そうだ。きっとそう。
ああ、なんて素敵なのだろう。
これをきっかけに僕は、この衝動を抑えられなくなってしまうではないか!!!
けれどそれすらも、とても快感でとても甘美で……。
あぁ、いい事を思いついた。
彼に言おう。相談をしよう。
二人でならきっと打開策も見つけられるはず………。
今までだってそうだった。
そうだね、まずは……………
隠蔽工作をしようか。
1話1話が短めになりますが………
頑張ります。