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第九十三話 暴れん坊女神ゲド

「あいつがある理由で、この特別な力を持った虹光石を作っていてな……その失敗作を一個貰ってきたんだ」

「失敗作だって?」

「別に変な副作用があるわけじゃねえから、安心しろ。俺としては完成品なんだが……どうもあいつにとって、満足行く出来じゃなかったらしい」


 何だか少しショッキングな話しである。散々自分の力を、チートみたく言われて、その実は失敗作だというのだ。


「そもそもその初代の緑人が、どうしてこんなとんでもない物を作るわけ? そいつもとんでもなく強いんでしょ?」

「何でも死んだ仲間を生き返らせたいんだと……」

「生き返らせる? 緑人なら、死者蘇生ぐらい、簡単でしょ?」


 ハンゲツが尤もな疑問を口にする。何しろまだ充分レベルを上げていない、ルーリですら、死者蘇生が出来たのである。

 もっと上位の、何千年も生きている、完全な緑人であるゲドならば、それぐらい簡単に出来そうであるが……


「それがちょっと難しい話なんだが……死に方が特殊だったみたいでな。その仲間ってのが、そいつから血を分け与えられた半緑人なんだが……実はそいつらとゲドは、昔人妖との戦いで全滅したらしいんだな」


 全滅という言葉に、一同は驚愕した。今いる天者や自分たちより上位のゲドですら敵わないほど、人妖というのは強いのか?


「何百万もの人妖の群れと、正面からぶつかったが……結局負けて、そいつら全員人妖に喰われちまったそうだ。本当ならそいつら皆、死んでも生き返れる筈なんだが……どうもその時に、特異な力を持った人妖に、身体だけでなく、魂まで喰われちまったらしい。そんでその人妖が、寿命で死ぬまで、そいつら皆、そいつの腹の中で封印されちまったそうだ」

「でも今は復活したんでしょ?」

「ゲドだけだけどな。完全な緑人でない他の奴らは、魂が弱り切っていて、復活できなかったそうだ。その上昇天することもできない状態だよ。そいつらを回復させるには、ゲド一人じゃ無理だったそうだ。自分より強い力を持った、特別な力を持った誰かの協力が必要なんだと」

「はぁ……」


 おおよその全容は判った。その仲間を生き返らせるのに必要な、特別な力を持った者というのが、虹光人なのだろう。

 そしてそれを作る過程に失敗作を、彼らが貰い受けて、今の春明に宿して、このゲームに利用したのだ。


「そういやその特別な力を持った虹光石って、ちゃんとした名前がついていないって聞いたけど……」

「ああ、発明者がちゃんとした名前を、まだ考えていないらしくてな」

「それでそいつは、今もまだ完成品は出てないんだな?」

「いや、もう完成して既に人に宿させてるぞ。お前らも、遠回しに関わったことがある奴だ」


 この言葉に、春明含めた全員に、疑問が宿った。今までの冒険を思い起こしても、それらしい人物との出会いは記憶にない。


「これもまた、ちゃんとした名前を考えていないそうなんだが……俺たちは、万能召喚士って勝手に呼んでるぜ。色んな世界や時空の者を、何でも思うがままに召喚できるだけじゃない。召喚した者に、特別な力を与えたりも出来る。俺たちみたいに血を分け与えたり、お前みたいにパーティーに入れて鍛錬を積まなくても、ただ召喚するだけで、半緑人の力を与えられるんだ。こいつはとんでもない力だぜ。まあ、その代わり、召喚する当人は、あまり強くないらしいが」

「もしかして……前に魚竜をかっ攫っていった奴か?」


 召喚士という言葉で、一行はようやく、あることに思い至った。

 それはかつて、ギン大諸島のダンジョンで、自分たちが倒す予定だったダンジョンボスを、戦う直前に召喚したという、謎の人物である。


「ああ、そうだ。ちなみにあの件は、狙ったんじゃなくて、偶然らしいが。ちなみに魂のない無限魔の場合、そいつが召喚しても、半緑人の力は得られないらしいぞ。そいつは今、ゲドから依頼という形で召喚術を使いまくってるぜ。それで自然と、奴の力が成長するのを待つらしい」

「そいつは、どういう了見で、ゲドの言うことを聞いてるんだ?」

「何でも惚れてる女と、結婚させて貰う願いを叶える約束をしたらしい。あのイカレ女帝のどこがいいんだか……。それで次の質問は?」


 何か言い方に含むような部分があるが、この件に関しては、もう話すことはないという理由で、鷹丸はさっさつ次の質問を要求してきた。

 すると次に勢いよく手を上げたのは浩一だった。


「ああっ、俺から質問……ていうか、すげえ文句言いてえことがある! お前ら……俺を生き返らせてくれてのはいいけどよ……何でこんな、女型ロボットの身体なんだよ! 俺は男だって、知ってるだろ!」

「ああ、それはな……春明の趣味に沿うようにと思ったからだ。そいつを少しでも喜ばせようと思ったんだが……途中で間違って、男の魂と契約しちまってな。でもまあ、それはそれで面白いと思って、そのままやってみた」


 怒れる口調の浩一を、鷹丸はそうあっさりと答えを口にした。


「馬鹿にしてんのか? こいつの趣味だと……」

「でもその代わりに凄く性能の良い身体を用意したんですよ! 機械だけれど、食事もできるし、五感も人間と変わらないようにできるし……」


 翔子が何やら弁明するように説明するが、それでも浩一の苛立ちは収まらない。そこで趣味のこと言及された、当人が口を挟んできた。


「そうか……悪いが俺は確かにロリコンだが、ロボットの身体には、あまり興味ないんだよな。ナルカみたいなのスカウトしてくれたのは嬉しいが……こっちの方は別にいいや。今からでも、身体を取り替えられるか?」

「それは無理です……。もうそこまで、肉体と魂が定着してると……」

「別にいいんじゃないのか? そっちの方が、人に好かれやすい見た目だし」


 何か勝手なことを言う面々に、浩一は苛立ちを覚え始めた。


「いらねえよ、そんな好意! あいつら(=海賊)も、俺をマスコットみたいに扱いやがるし……」

「それじゃあ、これでこの話は終わりだな。じゃあ、もう質問はないな?」


 浩一が未だ納得の声を上げていないのを無視して、鷹丸がさっくりと話しを終わらせにかかる。それに春明が頷いた。


「それで俺たちは、この後どうすればいい? ゲーム通りに、封印の麒麟像を、ハガネ大陸の魔王城まで、持っていけばいいのか?」

「そうだ。その前に、魔王役の無限魔と戦わなきゃいけねえが、それが終われば後は簡単だよ。それで無限魔共は、この世界から全ていなくなる」

「本当に大丈夫なのか? どうも今までの旅を見ると、シナリオにない事が、色々起きたみたいだけど……」


 春明達のこれまでの旅が、本当に彼らが用意したシナリオ通りだったのか?

 それは元のシナリオ原文を知らなくても、穴だらけだと言うことが、すぐに判るものであった。

 ドーラ救出作戦の内容が大きく変わったり、ボスキャラが戦わずに消えたり、敵国のボスが国を捨てて逃亡したりと……。このことには、翔子が答えてきた。


「うん……私も最初は少し不安だったんだけど……でも観測した限りじゃ、システムの方は大丈夫みたい。このまま無事に、ハガネ大陸の魔王城に、麒麟像を捧げれば、ゲームクリアだよ」

「そうか……」


 次の大陸で、一つイベントを終えれば、この世界の災厄は完全に解かれる。まだ魔王役の無限魔との戦いがあるが、それさえ済めば、後は完全にこの旅の意味は終わる。


「それで……俺はこの世界を救ったら……俺はどうすればいい? こんな怪物みたいな力を持っちまったら、もう元の世界に帰る気もしないが……もしかしてそれも元に戻してくれんのか?」

「ああ、それは無理だ。ていうか、お前はそれを望んでるのか?」

「……いや」


 春明の答えは否定。彼らにも言われたが、春明はこの世界に来て、色々酷い目にはあったものの、現状はかなり恵まれた立場にある。

 それに今は仲間もいる。このまま全てを捨てて、元の世界で元の生活にも戻るには、あまりに惜しい力と立場である。


今回話に出てきた、ゲドと万能召喚士の話しは、私が投稿した別の小説に関わるキャラクターです。本作には深く絡むことはないので、本作だけを見ている人は、特に気に留めなくてOKです。

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