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第七十話 次元の大水門

「何だお前ら、知ってたのか?」

「知ってたって言うか……まあ不確かな情報でな」


 ゲームの話しをするとややこしくなりそうなので、とりあえずそう有耶無耶に言ってみる。


「そうか。じゃあ私が明確な情報を言おう。二年前に、リーム教国は、ある一頭の霊獣を住処から追い出した。タンタンメンという超大型霊獣だ。……私もその討伐隊に参加していた」

「あっ、やっぱりお前がそうなんだ」

「うん?」

「ああ、気にしないで続けてくれ」


 このジュエルという女性は、名前も役柄も、ほとんどゲームで最後に仲間になるキャラクターと同じであった。おそらくこの女性をそのままゲームの役柄にしたのだろう。


「……? そのタンタンメンは火山の火口に自ら潜り込んで、何百年……いやもしかしたら千年以上かも知れないが、そこから全く動かない妙な奴だった。奴はずっと以前から何度もリーム軍からの攻撃を受けていてな。その都度軍に説明していたんだ。『自分がいる火山の下には、強大な魔物が封じられている。自分はその封印を果たすための蓋。もし自分がここを離れたら、封印が解かれて、世界中に強大な魔物が溢れる』とな。事実、あいつがそこから消えてから、一月ほどして、あの無限魔の大発生が始まった……」


 それが無限魔出現の真実。そもそも無限魔とは何者で、何故そこに封じられているのか謎だが、ともかくこれで事件の発端が何だったのかは判った。


「成る程、だからジュエルさんは封印を解いた責任を果たすために、こうして反乱軍を……」

「別に罪を償う気などない。あの時、私はただ軍人として命令に従っただけだ」

「えっ?」


 ナルカが感心してそう言うと、何故か即効で否定された。


「何故私に罪があるんだ? 前から奴を討伐する大義名分や、奴の話の真偽で、色々意見されていたのに、王室の馬鹿共『奴は邪悪な竜だ! 我ら教国の判断に間違いなどあり得ない!』てな感じの事言って、意固地に討伐計画を進めやがった! 下手に逆らえば反逆者になりかねんしな。こうなれば責任をとるのは、全部王室の連中だ! 私がどうこう言われる筋合いはない!」

「え? ……じゃあなんでこんなことしてるんですか?」

「勿論、自分に責任問題がかからないためだ。さっき言ってた話し、国内でも少しずつ広がってきている。まあ、討伐に参加して、奴の話を聞いた兵士は大勢いるしな。このまま何もしないうちに、この話が国外に広まったら……間違いなく私を含めて参加者全員が罪に問われるだろうが」 

「まあ、そうでしょうけど……」


 無限魔発生の原因が世界に知れれば、間違いなく世界中がリーム教国に責を迫ってくる。無限魔による犠牲と損害の量を考えれば、その恨み筋は相当な物だろう。


「そうならないうちに、教国を裏切って、自分は本意で参加したのではないと、はっきりアピールしなければ。それにあの天者の話しだと、春明、お前と一緒に行けば、教国軍の地位などとは、比べものにならない力と地位が手に入ると聞いたしな。はっきり説明しなかったのは気に入らないが、少なくとも天者は教国の馬鹿共より、遥かに信用できるしな!」


 ゲームでは己の罪を償うために、真っ向から教国に立ち向かった戦士ジュエル。だが現実のこの世界では……結構保守的で欲深い女だった。


「だからあんた、そうやって言われるままのやり方で、俺たちに会おうとしたのか?」

「そうだ。まさかこんな子供ばかりとは思わなかったが、話しに聞けば無限魔を何百も倒せるほどの強者じゃないか。期待してるぞ!」

「子供って……あんた今幾つよ?」


 子供扱いされたことにハンゲツ(25歳)が、やや不愉快そうにそう聞いてくる。

 ちなみに今のハンゲツの外見年齢は、ゲールを出たときよりも更に下がって、15~6ぐらいに見える。そのため春明達一行は、子供の集団にしか見えない。


「三十歳だ。そういうこと、例え同性でも聞くもんじゃないぞ小娘」

「ふうん。私よりは年上なのね。まあ、あんたもそのうち、私と同じガキになるでしょうけど」

「どういう意味だ?」


 彼女が次のパーティーメンバーであることは間違いないので、春明達はその後、ルーリとジュエルに、自分たちの事情と状況を、詳しく話し始めた。






「ゲームか……何だか妙な話だな。天者達がこの事態をどうにかしようとしているのは判ったが、何故そんな茶番をする? その麒麟像で、普通に封印は出来ない物なのか?」

「さあ、それを俺に聞かれてもな。そもそも無限魔ってのは何なのかも分かんないし」

「そうだな。以前は人妖の復活かと騒がれたが、どうも人妖とは全く別種の生物であるらしいしな」


 かつて様々な世界を渡り歩き滅ぼしていった人妖。リーム教国の低レベルな文明力では何も判っていないが、各国の調査で遺伝的にも身体構造的にも、人妖とは異なるという研究結果が出ている。


「ていうかさ……初めて聞くとんでもない話しが次々出てきてるんだけど……。もしかして私、この国どころか、世界を巻き込んだ問題に首突っ込んじゃった?」

「そうなるな。俺たち一緒に世界を救おうぜ!」


 話しを聞き続けて、呆然とした様子のルーリに、ルガルガが意気揚々とそう答えていた。


「ところでお前達、物のついでに聞いておくんだが……もしかしてお前ら、聖都の国宝で、何か盗んだりしたか?」

「盗む? 何でだよ? 聖都なんて、まだ行ったこともないんだけど?」

「そうか。まあ、違うならいいんだ」


 何やら唐突にジュエルが、今までの話とは違う、身に覚えのない質問をされて、春明達は困惑する。


「実は少し前に聖都で騒ぎがあってな。国宝が一つ盗まれたんだ。常識ではあり得ない方法で消えたそうだが、何やらこれも春明達の仕業とか、意味不明なことを言ってきたようだ。“次元の大水門”というんだが」

「ああ思い出した。そういやあの提督が、そんな事言ってたな。全く身に覚えがない話しだったけど。それって何なんだ?」

「強力な海水濾過と水専門の転移装置だ。海から大量の海水を取り込み、遠い陸の上に、真水にして転移移動させるものさ。その移動できる水は膨大でな、一日で湖が出来る程だそうだ。かつて砂漠が多かったこの土地を、それで再生させたと言われている」

「そいつはすげえな。そんな凄いのが、こんなオンボロの国にあるのかよ?」


 砂漠にそんな大量の真水を供給できる装置。そんな物があったら、世界の水不足など一気に解消できる。そんな凄いものを、リーム教国が作ったというのだろうか?


「黒の女神ワタナベ・コン様からの贈り物らしい。これを渡すときに“絶対に悪用してはいけない”と誓約をされたらしいが、教国は見事にそれを破った。赤森王国の都市を、そいつで水攻めしようとしたら、誓約違反で機能を停止してしまったそうだ。それ以来二度と動かなかったそうだが……」

「つまり今はただのガラクタか? それであり得ない方法てのは?」

「厳重な警護がされた部屋から、急に空間転移で吸い込まれたとさ。いくら停まっているとは言え、あれほど強力な魔導装置を召喚できる者など、そうはいないだろうが……」


 正直何故その話しで、自分たちが疑われるのか、さっぱり判らない一同。まあ、教国がそういう屁理屈を言うのは、今に始まった話しではないようだが……


「召喚か……ちょっと覚えがあるわね」


 ハンゲツが何か考え込みながら、不意にそんなことを言ってきた。


「何だ? そういう召喚士に知り合いでも?」

「知り合いにはいないわよ。ほら少し前に、島の洞窟ででかい無限魔が、目の前で誰かに召喚されたでしょ?」

「ああ、そういやそんなこともあったな」


 あの時は名前も顔も知らないどこかの召喚士に、目の前で獲物を横取りされたのだ。怒るべきなのか、楽に攻略できて喜ぶべきか、微妙な話しであった。


「ゲールで低級の無限魔を召喚する装置があったけど……あのレベルの無限魔を召喚できる奴なんて、そうはいないわよ。どうも状況からして天者じゃないみたいだし」

「じゃあ、何だと?」

「さあ? 私達の知らないところで、何かとんでもない奴が、何かやらかしてるのかもね」


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