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第三十四話 新装備

「へえ、似合ってるじゃん」

「同じ赤森服なんだから、大して変わらないだろう?」

「柄でも結構見た目は変わるわよ。洋服だって同じよ」


 試着室の前で春明は、新しい和服に着替え終えて、二人の前に出る。今彼が着ているのは『雷雲の着物』というものである。

 この店に置かれている着物で、春明に会うサイズの中では、最高級の品だ。上着は青く、灰色の生地に雷雲を象ったと思われる、青い曲線の模様が描かれている。襟三の色も灰色だ。

 これは雷の魔法の加護が加えられているそうで、雷属性攻撃に耐性がある。他に麻痺を促す攻撃を予防する機能もあるそうだ。


「そんで刀はそれでいいの? 何か大きくない?」

「一番高価な刀がこれだからな。だからって背中に差すには短いし……まあ、何とかなるだろ」


 武器として購入したのは『打刀・ドウドウ』という銘がつけられている刀である。白い柄に黒い書道のような乱れ模様が描かれている。

 ちなみにこの手の武器には、大抵作った者の名前がつけられる。これの制作者のドウドウとは、名前からしてホタイン族、もしくはその血縁であろうと言うこと。

 刃渡りは74センチで刃は乱れ刃である。この刃渡りは、身長155センチ(試着の時に測った)の春明には、やや長いが、仕方ないと春明は割り切っていた。ゲームでは武器や防具のサイズなど、特に気にすることはなかったのだが……


 ちなみに後から、これらとは別に『破魔弓・安曇』という和弓も購入した。何でもこれから放たれる矢には、アンデットに高い効力が附属されるそうだ。


「安曇か……これを作ったのは、赤森人か?」

「でしょうね。多分リーム教国がちょっかいかける前の、赤森からの輸入品じゃないかしら?」


《春明 Lv45 HP 672/672 SP 268/268》

《可能装備  武器/刀・槍・弓   身体/和装・和鎧・プロテクター》

《武器/打刀・ドウドウ  身体/雷雲の着物 装飾1/麻痺避けの腕輪  装飾2/   装飾3/   》

《攻撃力/2100  防御力 1681  魔力 105  敏捷性 71 感覚 67》

《獲得経験値 114243/320000》

《スキル   集中 0  気功治癒 10  気功撃 12  気功矢 12  気延撃 20  飛斬 20  百撃矢 30  魂吸撃 20 気功防御 20》

《リミットスキル   大一撃 30%》






「こっちはあまり変わらないな」

「ええ、衣替えした気がしないわね」

「衣替えって……強い装備品に替えるだけだろ? 俺はこういうのが気に入ってるんだ」


 ルガルガが着替えたのは、前の装備品と似た感じのプロテクターであった。下に着ているTシャツは変わらず、その上に装着している防具が新装備だ。

 基本的な外観は、前の装備とあまり変わらない。塗装の色や、装甲の形や大きさは、微妙に変わっているが。だが大枚はたいたこともあって、防御力はこれまでの装備の比ではない。

 名前は『ワイバンプロテクター』という。竜型の無限魔の鱗から作られたという。防御力が高い他に、毒攻撃に耐性があるとのこと。


 ルガルガ用に購入した武器は、前と変わらず鉞だ。だが防具と違い、こちらは外観が前と大きく違う。外観と言うより、その色がだが。

 その斧は『グリンアックス・ドウドウ』と言って、刃も柄も、全てが光沢のある緑色の金属でできていた。これは素材の一部に、風の力を宿した無限魔の羽が使われているそうで、風の魔力が使用者の動きを少し素早くしてくれるそうだ。


《ルガルガ  Lv49  HP 848/848  MP 340/340》

《可能装備  武器/斧・大剣・鈍器   身体  和服・洋服・和鎧・洋鎧・プロテクター》

《武器/グリンアックス・ドウドウ   身体/ワイバンプロテクター  装飾1/幸運の麒麟像  装飾2/  装飾3/   》

《獲得経験値 66297/800000》

《攻撃力 4251  防御力 2380  魔力 240  敏捷性 29 感覚 106》

《スキル  集中 0  気功撃 12  怯みの一撃 18  山割一閃 24  大打撃 24  怯みの乱撃 36  気功撃二式 48  気功防御 20》

《リミットスキル  命の一撃 30%》


「じゃーーん! どう春明?」


 春明とルガルガが、あっさりとした様子で、着替えを見せたのとは対照的に、ハンゲツは見せびらかすように、意気揚々と試着室から出てきた。

 彼女が着ているのは、1枚目のネクタイシャツは変わらず、その上に着込んでいる、ローブとズボンが変わっていた。これは二つで1セットらしい。

 名前は『スノーローブ』という、パーカー付きの白いローブ一式である。名前の通り雪のように白い生地でできており、今まで黒一色の魔女のような装いだったハンゲツの身なりは、以前とは一変していた。

 黒いネクタイと靴以外は、彼女の着用物は白一色で、雪女のような姿である。このローブには氷属性に耐性があり、凍結の状態異常も防ぐとのこと。


「ねえ、どう? いい感じでしょ?」

「ああ、まあそうだな……」


 まるで恋人のお披露目するように質問するハンゲツ。別に装備品など、性能が良ければ何でも感じに考えていた春明は、そう適当に答える。

 ゲームだった頃には、スクール水着やウェディングなどの、おふざけ装備を平然とキャラに着させていた。今思うと、あんな装備で街を出歩くキャラ達は、町の人からどんな風に見られるのだろう?


(ゲームと違って、こっちはファッションに気を遣わなきゃいかんか……。やれやれこれじゃ自由な装備を選べないな)


 ちなみにハンゲツが新調した武器は『サン・ロッド』という、太陽のように真っ赤な魔導石と、赤い装飾が施された柄を持つ魔道杖だ。これには火の精霊の力が宿っており、これを装備すると、属性攻撃が使えない霊術士でも、火属性魔法が使えるのだという。


《ハンゲツ Lv46 HP 448/448 SP 512/512 》

《可能装備  武器/杖・短剣・剣   身体/和服・洋服・プロテクター》

《武器/サン・ロッド  身体/スノーローブ 装飾1/毒避けの腕輪 装飾2/石化避けの腕輪  装飾3/   》

《攻撃力 1123  防御力 1125  魔力 2264  敏捷性 45 感覚 44》

《獲得経験値 96020/400000》

《スキル  ガードアップ 25  アタックアップ 25  マジックアップ 25  スピードアップ 25  ガードダウン 25  アタックダウン 25  マジックダウン 25  スピードダウン 25  TPアップ 50  ゴーストアタック 30  ゴーストズアタック 50  マジックファイア 20  マジックバリア 40》





 店を出た後、春明はウィンドウを覗いて、少し難しい顔をしていた。


「全額900万ぐらいしたか……結構な消費だな」

「何でだ? 金ならまだまだいっぱいあるじゃん」

「今はな……。でもゲーム通りなら、これから先はまだまだ長いんだ。このままだと一文無しになるぞ」


 ゲームではレベルを上げる度に、強い装備を購入する必要が出てくる。強力な装備ほど、価格はべらぼうに上がるし、仲間が増えていけば当然出費もその分増える。

 まだ一つ目の大陸で、まだ三人しか仲間に以内状態で、これほどの出費となると、いずれ金がそこを着いてしまうのは目に見えている。


「そのゲームってのじゃ、金はどうやって集めるわけ? どっかで働いて、給料貰うわけじゃないわよね?」

「ああ、ドロップアイテムって言うのを、店で換金して稼ぐんだ」

「ドロップアイテム?」

「モンスターを倒すと、自動的にそういうアイテムが手に入るんだよ。この前、井戸下の幽霊を倒したときに、魔石が出てきたろ? 多分現実にしたら、あんな感じになると思うんだが……。今んとこ、あの幽霊以外にアイテムをドロップした奴はいないんだよな……」


 それが未だに判らない謎であった。ゲーム的に考えれば、モンスターを倒すと死体が消えて、アイテムがポン!と出てくる、という感じにしそうなものだ。

 だがこの世界では、無限魔を倒しても、しっかり死体は残り、何かアイテムを落とすと言うことはしないんのだ。これでは冒険の収入が、いつまで経っても得られない。


「それって霊素材の採集のこと? それだったら、化け物の死体から、直接剥ぎ取らないと駄目よ」

「えっ!? そうなの!?」


 ハンゲツの言葉で謎はあっさりと解明された。ゲームでは自動だったシステムは、この世界では、かなりえげつないことをしないといけないらしい。


「何てこった……だったら今までの無限魔は倒し損かよ……」

「それは大丈夫よ。あんな弱い奴からじゃ、大した霊素材は採れないし、多分集めても誰も買い取ってくれないんじゃないの?」

「そうなのか?」

「ええ、無限魔が出てから、霊素材も供給が増えすぎてね……弱い素材はあんまり取り扱われないの。特にこの国じゃ、無限魔が弱いからね」


 ゲームではどんな低レベルモンスターからのドロップでも、店は全て買い取ってくれた。凄いことに『石』・『毒キノコ』など、どう考えてもゴミにしか見えないアイテムだって、実に親切に買い取ってくれたのだ。

 だがこの世界では、一定のレベル以上の価値がないと、一銭の収益にもならないようだ。


「そうね。考えてみれば、これは言い稼ぎ方かも。ちょうどこっちには、何故か物を無限に収納できる力があるし……。今の私達のレベルと装備なら、上級危険区画の無限魔だって……」


 そう言うハンゲツの顔が、何故か不敵な笑顔を向けていた。



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