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第二十七話 死神

 彼らは上に登り、寺院内に座り込んだ。

 時間は午後二時頃。神官達が避難したとき、重要な物は全て村まで持ち込んだので、寺の中にはこれといって特徴的なものはない。

 かつては神官の瞑想場であった広間に、彼らは座り込む。そしてアイテムボックスから弁当を取りだし、まるピクニックにでも来たかのように食事を始めた。


「はい春明。あ~~ん」

「………」


 何とも上機嫌だったルガルガが、何をしたかというと……。フォークで刺したソーセージを、いきなりそう言って春明の口元に突き出した。これに春明は、冷たい眼差しで首を横に振る。


「何だよ、つれねえな。仲間じゃねえか」

「それで今の行動は……年下に対する保護欲か? それとも己より小さい俺をからかってるのか?」

「ははっ! どっちだろうな! まあ、気を悪くしたなら、すまんかったよ!」


 そう言ってソーセージを自分の口に含むルガルガ。そんな彼女に、ハンゲツが呆れながら問いかける。


「レベルアップというのしてから、あんた随分様子が変わったわね? 強くなれたのがそんなに嬉しい?」

「そりゃそうだろう? 誰だって強くなりたいし」


 一応正論ではある。春明とて、強くなるために無茶なレベル上げをしたのだ。次に春明が問いかける。


「そういやお前、フード女からは、天者より強くなれるとか、何とか言われたみたいだけど、天者と何か因縁でもあるのか?」

「いんや全然」


 あっさり答えるルガルガに、春明はがっくりと肩を落とす。


「何だよ? 何で力を求めるのか~~とか言って、壮絶な過去でも語れば良かったか?」

「別にそうは言わねえけど……」

「まあ確かに、天者に思い入れは少しあるけどさ」


 何やら少し遠い目をするルガルガ。天者というのは、現在赤森王国を統治している、不老不死の能力者達である。

 その力は強大で、リーム教国が崇拝しているワタナベ・コンを除けば、人間種の中で最強とも言われる。それと同時に、彼らのかつての世界的功績から、赤森王国以外の者達からも、強い尊敬を集めている。


「俺も昔はそいつらに憧れて、特訓とかいっぱいしたんだよな。でも大きくなってから、天者っていうのは、別に修行して強くなったわけじゃないって知ってな。それが判ると、何かいまいちやる気が抜けちまったんだよ……」

「失望したから、やる気なくしたってのか? それは……」

「ああ、もう判ってるよ! 天者のせいじゃなくて、こっちの勝手だし。でもまあ……強くなるのに、別に地道に修行しないと駄目って訳じゃなかったんだよな。正直、お前と会えて嬉しかったよ。というかわけで春明、今後ともよろしくな!」


 そう言って頭を撫でられる春明。当人達の角や足等の、特徴の違いがなければ、まるで仲の良い姉弟のような風景だ。


(露骨に子供扱いされてるな……。いっそ、本当のこと言っちまうか? ……いや、万一のこと考えて、やめておこう)


 そして一休みして、HPとSPが全快し、精神的に落ち着いてから、彼らは再び井戸の下へ狩りに出かけた。彼らは寺の中で宿泊し、三日間に渡って、レベル上げを続けることになる。





《春明 Lv44 HP 640/640 SP 260/260》

《可能装備  武器/刀・槍・弓   身体/和装・和鎧・プロテクター》

《武器/名も無き打刀  身体/白い着物 装飾1/麻痺避けの腕輪  装飾2/   装飾3/   》

《攻撃力/800  防御力 404  魔力 99  敏捷性 67 感覚 64》

《獲得経験値 164195/250000》

《スキル   集中 0  気功撃 12  気功矢 12  気延撃 20  飛斬 20  百撃矢 30  魂吸撃 20》


《ハンゲツ Lv45 HP 420/420 SP 480/480 》

《可能装備  武器/杖・短剣・剣   身体/和服・洋服・プロテクター》

《武器/ブルースタッフ  身体/黒い魔道ローブ 装飾1/毒避けの腕輪 装飾2/石化避けの腕輪  装飾3/   》

《攻撃力 430  防御力 420  魔力 1126  敏捷性 42 感覚 41》

《獲得経験値 215972/320000》

《スキル  ガードアップ 24  アタックアップ 24  マジックアップ 24  スピードアップ 24  ガードダウン 24  アタックダウン 24  マジックダウン 24  スピードダウン 24  TPアップ 48  ゴーストアタック 30  ゴーストズアタック 50》

《リミットスキル  ゴーストバイソン 30%》


《ルガルガ  Lv48  HP 810/810  MP 330/330》

《可能装備  武器/斧・大剣・鈍器   身体  和服・洋服・和鎧・洋鎧・プロテクター》

《武器/狩猟用大斧   身体/ガルディス産プロテクター  装飾1/幸運の麒麟像  装飾2/  装飾3/   》

《獲得経験値 116153/650000》

《攻撃力 1790  防御力 905  魔力 230  敏捷性 18 感覚 102》

《スキル  集中 0  気功撃 12  怯みの一撃 18  山割一閃 24  大打撃 24  怯みの乱撃 36  気功撃二式 48》

《リミットスキル  命の一撃 30%》





「ねえ……そろそろ先に進まない」


 三日目の午前頃の戦闘を終えた頃、ハンゲツがそう言い放つ。一行はこの三日間、同じ場所で同じ無限魔を延々と狩り続けている。

 出現する無限魔の種類は、あの外套怪人一種類のみ。改修した魔石の数も、既に数百に及んでいた。敵の攻撃パターンも完全に見飽きたもので、こちらのレベルも上がってきたこともあって、初戦と比べるとかなり楽に倒せるようになった。

 それに春明が《魂吸撃》というスキルを習得したこともあって、SPをかなり長く保持できるようになった。今なら回復アイテム無しで、連戦も可能だろう。だがそんな戦いに日々にも飽きが来る。


「何だよ、まだまだいけるだろ?」

「そりゃいけるでしょうね。ていうかこのまま行けば、永遠に戦い続けられそう……。でもいい加減同じこと繰り返すのにも、飽きてこない? 何かレベルが上がるのも遅くなったし」

「レベルは上げといて損はないだろう? この先何が起こるか判んねえんだぜ! だったらここで力をつけといた方がいいだろ?」


 現実で考えれば、確かにその通りである。ゲームではレベルを上げすぎると、後の展開が詰まらなくなるという弊害があったが、現実ではそういう訳にもいかない。

 生き残るために、例え飽きる作業でも、懸命にやる必要はあるだろう。最も春明が二人に話した、セーブ&ロードの件があってか、二人の戦闘に関する緊張感は、通常より薄いのかも知れない。まだ二人は、そのロード復活を試していないが……


「俺も賛成だ。ちょっと先に進んで、ダンジョンの様子を見るぐらいなら、いいんじゃないか? もしかしたらこの先に、もっと実入りのいい敵が出るかもしれねえぞ?」

「ううん……」

「それに俺も少し飽きてきたからな。血が出ない敵を倒しても、いまいち興奮しねえし」

「血が? まあ、お前がそう言うならいいよ」


 一応リーダーと言うことになっている春明の言葉で、ルガルガも頷く。そして到着三日目にして、ようやく彼らは、ダンジョンの奥に足を踏み入れた。






 井戸下ダンジョンの奥は、まり代わり映えのない広い廊下が延びていた。だが幾つか分岐する道があり、間違った道を通ると、元の場所に戻るなど、簡単な迷路になっている。

 そしてやはり、出現する敵も、入り口ではいなかった者もいた。


「たりゃあっ!」


 ルガルガの鉞が、ハンゲツを狙ってきた大鎌の一撃を受け止め、弾き返す。更に重い一撃を浴びせようとすると、敵は宙を浮きながら、こちらを向いた状態で一気に後退して距離をとる。


 今彼らが相手をしているのは、黒い死神であった。

 外見は今まで戦ってきた外套怪人と酷似しているが、そちらと違ってこいつは、外套から2本の腕を出している。その腕の付け根の方から、何枚もの黒い布きれが、マントのようにはためいている。

 ちなみに足の部分は、隠れているのか、最初から足がないのか、外套に隠れていて見えない。こいつは足音を立てずに、空中を浮遊しながら移動している。

 そしてそいつの腕には、ルガルガの鉞にも劣らない大きさの、大鎌が握られていた。まさに死神という形容がふさわしい。


 ただし元の世界のファンタジーに出てくるようなものとは、形状が大分異なる。草刈り鎌を大きくしたような、柄と刃が90度で繋がった形ではない。

 刃は柄から僅かに傾いている程度で、真っ直ぐに近い形で取り付けられている。薙刀の刃と峰を、逆にしたような感じだ。

 まあ実際の所、ファンタジーに出てくるような形の鎌など、使いづらすぎて実用性がないのだろう。

 この無限魔の死神の武器は、ゲームの武器の浪漫を、どうにか現実に反映しようとした努力が感じられる。


 ガキィン! キィン!


 ルガルガと死神の、重量武器同士の剣戟が鳴り響く。すぐ隣では、春明がもう一匹の死神と格闘していた。

 小柄な身体と武器の大きさでは、敵よりも威力が劣るだろう。だが敵は武器の重さゆえか、敏捷性が遅いため、それを利用して上手く攻撃を受け流すことができた。


 ザシュッ!


 敵の攻撃の隙を見切り、春明が死神の身体の気功撃を加える。その攻撃の痛手が元で、敵の動きが鈍った隙に溜を行い、更にもう一発気功撃を放った。二発目でHPがゼロになったようで、死神は消滅する。

 こいつも外套怪人と同じ、霊体型の無限魔であるため、死体が残らない。石床にドロップした黒いクリスタルが落ちる。闇属性の魔石らしいが、回収は後だ。春明が隣でルガルガと戦っている、もう一匹の死神に斬り付けた。

 その死神は、すでにルガルガに一発喰らっていた。さらに春明が、横からもう一発を与えて、既に瀕死である。


(大分SPが減ってきたな。ようし……)


 止めを刺そうとしたルガルガを制止し、春明は死神に刀身を向ける。するとその刀身が、赤く輝きだした。

 これも気功の光なのだが、いつもの攻撃技とは異なる。弱った死神に、春明が外套の腹に当たる部分に、刀の刺突を与えた。するとどうしたのか、死神の身体からも、赤い光の波が放たれ、刀身の方に吸い込まれるように流出する。

 吸い込まれているのは、この死神が動くための、身体のエネルギーそのもの=SPである。


 グシャッ!


 春明が死神から、何かを吸収している最中に、死神が反撃を試みようと鎌を振り下ろそうしていた。だがそれは叶わず、身構えていたルガルガの鉞が、死神の頭を叩き割った。

 死神が消滅した後、春明はウィンドウで自分のSPを確認する。今の春明の技は《魂吸撃》という、敵のSPを吸収するスキルだ。回復アイテムと違って、いつでも使えるわけではないが、敵がいればいつでもSPを回復できるという点では、実に優れた技である。

 自己状態を見ると、春明のSPはそれによって、三割近くが回復していた。


「後一発ぐらいは、とりたいな」

「じゃあ次来たときに、俺が上手く吸えるよう、隙を作ってやるさ」


 そう言って、彼らはダンジョンを進む。春明は魂吸撃でSPを回復できることから、ここ最近の戦闘では、春明が積極的にスキルを使い、他二人は援護と温存に努めることが多くなっていた。


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