表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/105

第百二話 対鉄鬼戦2

今回、作中で日本刀賛美な台詞があります。気に入らないと思われる方も、どうかスルーしてください。

 春明達が赤森兵達と交戦している中、ジュエルとガストンの戦闘も熾烈を極めていた。

 ガストンの日本刀型の武器が、凄まじい瞬足で次々と繰り出される。ジュエルはそれをロングソードと盾で防護し、隙をついては、刃に雷属性を宿したロングソードを振りかざして、斬りかかる。


 ジュエルの一閃をガストンが弾き返し、刀を振ると同時に、足が繰り出される。その一撃が、ジュエルの腹に命中。防御力重視のスペックを持つジュエルは、それだけで大ダメージにはならないが、先程から何発も攻撃を受けて、春明同様に確実にHPを削られていく。


「さすがは元リームの精鋭騎士。パワースペックだけでなく、純粋な剣技も中々のものだな……」

「それは嫌みか? こっちはまだ二太刀しか、そっちに入れてないんだが……」

「別に嫌みのつもりはないさ。むしろ羨ましいぐらいだ。俺たちはこの鉄鬼の力がなければ、上位無限魔すら倒せないからな」

「貰い物の力であることは、誰だって同じことだ!」


 ジュエルがシールドアタックを繰り出す。飛んでくる光の盾を、ガストンが真っ二つに両断した直後に、ジュエルがロングソードで刺突を繰り出した。


 キィイイイン!


 だがその攻撃が届くことはなかった。ガストンが刀の刃を横薙ぎにし、来る出される剣の腹を叩きつける。それによって軌道を外れた剣先は、ガストンの頭の右側を通り抜ける。

 その拍子に、ジュエルはガストンに無駄に近づきすぎた。


 ザキン!


 横薙ぎに刀の刃が、即座に刃の方向を変えて、滑り込むようにして即座に二撃目を放つ。

 ガストンがジュエルの横側を通り抜けて、その駆け込みと同時に動く刃が、ジュエルの腹を斬り付けた。


「うぐっ!」


 斬り付けられた重厚な鎧に大きな傷がつき、剣撃の衝撃が鎧の下を通って、ジュエルの身体に響き渡る。実に格好良い体勢で斬り伏せたガストンが、すれ違って数歩進んだあとに口ずさむ。


「総合パワースペックは、この鋼鯱同様。自前の剣技も、全く問題ない。だが武器の差があったな。お前の剣と盾の装備は、守り役ではなく一対一の戦いでは、世界最高性能の赤森刀には、機敏さも切断力にも全く勝てんさ」


 武器の性能差を誇示するガストン。ジュエルとガストンの一騎打ちは、明らかにジュエルが劣勢であった。


「大地震!」


 ルガルガが鉞の刃に、凄まじい気功の光を放ちながら、床に鉞を振り下ろして、刃を叩きつける。


 ズゴォオオオオオォ!


 その一撃が魔王城全体を揺らし、常人なら一発で粉々になるほどの、強力な衝撃波が、この地帯一帯の床に、拡散・解放された。


「「ぬぁあああああっ!?」」


 足下に凄まじい衝撃が走り、赤森兵達がバランスを崩して倒れ込む。面白いことに、その地面から伝わる衝撃波にやられたのは、敵の赤森兵達だけであり、どういう原理なのか控え含めた味方には、全く影響がなかった。

 敵全体にダメージを与える上に、状態異常のスタンを付加する、ルガルガのリミットスキル“大地震”である。

 その衝撃で少なくないダメージを受けた上に、一時行動不能になった赤森兵達。この隙を逃す手はなかった。


「おりゃぁああああっ!」


 春明の大一撃二式。浩一の分身斬り。二人の強力なリミットスキルが発動した。大一撃は、ゲームでは単体攻撃であったが、この世界では力に余力が残っていれば、何人でも斬ることができる。

 春明の気功迸る斬撃が、次々と赤森兵達を斬り捨てていく。首を斬られる者、胴体を裂かれる者と、致死に至るダメージを受けて、赤森兵達が血飛沫を上げながら何人も倒れていった。

 相手が不死と判っているとは言え、この世界で初めて春明が、人を殺した瞬間であった。


 浩一の分身斬りも圧倒的な威力を発動させた。何人も分身した浩一が、倒れたり膝をついたりしている赤森兵達の首を、次々と撥ね飛ばしてく。

 パワー切れでスキルが停止した時には、何十人もの赤森兵達が死亡・戦闘不能となり、倒れていった。


 だが損失を受けたのは、敵だけではなかった。いち早く体勢を立て直した赤森兵達が、次々と立ち上がり攻撃に転じる。彼らは一斉に一人を狙った。今し方自分たち全員に深刻な隙を与えたルガルガにである。

 大技を放ったあとで、動きが鈍っていたルガルガは、彼らの攻撃を読み切れなかった。同じく春明達も大技発動直後で、救援に行くのが遅れた。


 赤森兵達の、ベルトの画面部分にある、スイッチを押すと、途端に彼らの武器に大量のエネルギーが注入され、刀身が白く輝き出す。必殺技チャージのエネルギーである。

 そして彼らは一斉に、その力を高めた刀でルガルガに襲い来る。


 ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ! ドシュッ! ドスッ!


「ぐばっ! ぢぎしょ……」


 十人以上の赤森兵達の必殺剣の斬撃や刺突が、ルガルガの身体に炸裂する。これまでにも多くのダメージを受けて、耐久度が弱まっていた鎧は、それでバッサリと切断・貫通され、ルガルガの肉体に傷を付ける。

 ある者はルガルガの首に、クリティカルヒットを当てていた。全身から大量の血を噴き荒し、周囲に取り囲む赤森兵達の鉄鬼鎧を赤く濡らす。

 刀を引き抜かれたルガルガは、そのまま力なく倒れ込んだ。当然残りHPは、0になっている。


(ルガルガ……くそがっ!)


 後で復活できるのは判ってるし、さっきの魔王戦でも、数回死者が出ている。だからといって味方が死ぬのは気分のよい者ではないし、現戦闘におけるこちらの戦力も大幅に減った。

 戦闘可能な敵の数はおおよそ120人。ついでこちらは2人。割り当て分は先程とあまり変わっていない。





 一方のもう一つの方の戦いも佳境を迎えていた。


 キィン! キィン! ザシュッ! ザシュッ!


 ガストンの瞬足の剣撃が、ジュエルの身体を次々と切り裂いていく。TPは既に溜まっているが、リミットスキルを使おうにも、敵のあまりに果敢な攻撃に、使う暇がない。

 盾は既に弾き返され、ジュエルは今ロングソードの両手持ちで交戦していた。だがそれで敵の攻撃を受け止めきれるわけもなく。ジュエルの重厚な鎧はすっかり傷み、刃を受け止めきれずに板金が切り裂かれる。

 ジュエルの身体には幾つもの深い切り傷がつき、前進から汗と混じって大量の血が流れ出てくる。やがてジュエルのHPも、0に近づいていった。


 ドシュッ!


「ごがっ!」


 今までどうにか急所に当たるのを防いでいたジュエルだが、弱り切った身体ではそれもできなくなる。

 やがてガストンの刀が、ジュエルの首に炸裂した。ジュエルの装備には、兜と首回りの装甲がなかった。首の肉に刃が食いこみ、更に多くの血が吹き出る。幾ら防御力特化の肉体を持っているとはいえ、これはかなり重大な一撃である。

 ガストンは更にジュエルの首にもう一太刀。これで完全に力尽きたようで、ジュエルは首に血を垂れ流しながら、倒れ込んだ。

 一行のメンバーの2人が倒れたことで、ガストンは余裕を持って、未だ交戦中の春明に声を上げた。


「もうお前らに勝ち目はない! 降参したらどうだ! それとも魔道士3人と入れ替えるか!?」


 挑発するような口調のガストン。今の春明は、多数の敵の斬り込みを防ぐのに手一杯で、メンバー交代を発動させる余裕がなかった。

 例えできたとしても、控えにいる魔道士メンバーでは、あっさりとやられてしまうだろうが。


(むっ?)


 春明は戦いをやめる様子はなかった。ただ一瞬だけ、ガストンの方に目を向ける。その時の春明は……何故かほくそ笑んでいた。

 ガストンが相手にまだ何か秘策があるのか?と警戒しだしたとき……


「「!?」」


 数人の赤森兵と鍔迫り合いをしていた春明の身体が、突如爆発したかのように光り出したのである。虹光石の極彩色の光を高めたような、眩い光。

 その光と共に、彼の周囲にエネルギーの波のような物が発生し、多人数の赤森兵が、爆風を浴びたかのように吹き飛んだ。


「春明さん! いいんですか!?」

「もうゲーム外だからいいんでしょ! 逃げるわよ!」


 状況が判らない中、控えにいた彼の仲間が、その場から逃げ出した。見晴らしの良いベランダから、次々と飛び降りていく。

 戦っていた浩一もまた、敵が動揺している隙に、持ち前の俊敏な動きでホールを移動し、ルガルガとジュエルの死体を抱えて飛び降りた。


 光に包まれた春明の身体は、人の形でなくなり、どんどん大きくなっていく。数人の赤森兵が、彼に向かって発砲するが、豆鉄砲を鉄に撃ち込んだようにびくともしない。


「全員退……」


 危機を感じたガストンが命令を下そうとした瞬間……魔王城の最上階は大爆発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ