親友いわく、おいしい設定らしいです
仲良しな親友いわく、
私の周りはどうも、設定的においしいらしい。
証言1。親友A。
「異性の幼馴染が一人だけいるならともかく、二人もいるとかマジありえない! しかも、家は両隣?!」
証言2。親友B。
「多少難はあるけど、見た目は標準をクリアーしてるし、学内でもそこそこ人気の物件。そんな二人と小学校上がる前からのお付き合いで、朝は仲良く三人でほぼ毎日登校でしょ?」
「おいしい設定だよねー」
「あの二人、めったに女子とは話をしないくせに、アンタには普通に話すのが、また、こう…」
うん、私の話をしながら悶えるのはやめてください。
「「ねえねえ、そこにラブとかないのかな??」」
ついでにキラキラした目で、人を見つめるのは勘弁してください。
だって、私の回答はただ一つ。
「ないな」
「「えー…」」
「残念そうに見ないで。めったにって、君たちとも普通に会話してるじゃない」
「それは用事があるからだよ」
「アンタの友人だから、話してくれてるのよ。アンタという存在がなければ、彼らはうちらと会話なんてしないね」
今日は特に話題がないのか、この二人、私と幼馴染二人をネタにする気満々ですな。
「そこの友人B、多少難ありと言いましたね?」
「ちょっと、友人Bって何よ」
「……じゃあ、隣にいるあたしは友人Aなのね」
苦情は放置しよう。
今から、私が語るであろう幼馴染の存在に比べたら、彼女たちは端役にすぎないのだから。
「待てい、うちらの抗議を無視かい」
「鼻で笑うとか、地味にムカつくんだけど。しかも今、絶対に失礼な事考えたでしょ?」
おっと、端役はさすがに失礼だったかな。
彼女たちも、実は結構な曲者たちなのだ。
幼馴染と比べても遜色ないと思う。というか、同列だろうな。
しかし、彼女たちについて詳しく語るのは別の機会にしよう。
「私からすると明子も、和子も、十分にすごい設定だと思うよ?」
……勝ちたくないくらいに。
「すごいのは、自覚してるっつーの」
「うちらが言ってるのは、すごいじゃなくて、おいしい設定ってとこなのよ」
「そうそう。アンタのは、おいしい設定なのよ」
おいしいのか、あの、二人と幼馴染な関係は。
「そうですかねー?」
「「そうなのよ!!」」
「で、何の話で盛り上がってるの?」
噂をすればなんとやら、ご本人様の登場ですな。
「来たな、幼馴染その一」
「おい、なんだその名称」
不機嫌面で佇む、幼馴染その一、浩太郎。
我が家の右隣に住んでいる。
見た目は普通だが、こいつには裏で囁かれている二つ名がある。
チケットの神様。
コンサートやイベント。どんなに高倍率の抽選チケットでも、コイツの手にかかれば必ず手配できる。
ファンクラブ限定とかは関係ない。浩太郎の手にかかれば、それは些末なことらしい。
オークションなんかで、10万円くらいに跳ね上がるようなチケットをコイツはとってくれるのだ。
しかも、かなりいい席を。
どんな魔法を使うのかは謎だが、コイツと幼馴染でよかったと思った回数は数えきれない。
「はい、これ」
自分でも申し込んだけども、落選したコンサートチケットを目の前に出される。
「え、嘘。とれたの?」
「俺に獲れないチケットってなかなかないよ?」
「わーい、ありがとう。って、なぜに二枚?」
なぜか、チケットは二枚ある。
「俺も一緒に行くから」
「でも、これ、浩太郎の好きなアイドルじゃないよ?」
そう、コイツがチケットをとる技術をあげたのは、自分の為だ。
女性アイドルグループに興味を持ち始めてから、コイツはコンサートや握手会などのファンの集いに行くようになった。
行くには、チケットがいると学習してからは、チケットを獲るという技術をあげた。
うん、あげすぎたといっても言い過ぎではないと思う。
技術も、興味も。
浩太郎の部屋には、どん引きするくらいのアイドルグッズがある。
今も、携帯のストラップには現在一番お気に入りのアイドルのストラップが光っている。
鞄の中にある文房具類も、見てるこっちが恥ずかしいくらいにアイドルまみれである。
「この会場、夜一人で帰すの心配だから……」
ここで、優しいなと感動できないのが、長年お付き合いのある幼馴染だと思う。
「で、その見返りは?」
「どうしても、頭数のいる整理券配布に付き合って。コンサートと同じ日にあるから丁度いいだろ」
後ろで「「デートの誘い!!」」とか、興奮してる親友AとB、もとい明子と和子が少しうっとおしい。
顔は確かに標準以上だと思う、しかしアイドルオタクとしてのレベルが高すぎる。
年々バージョンアップする浩太郎の部屋に、終着点はあるのか心配になる。
親友たちも、あの部屋を見たら、幻想も砕け散るだろう。
早く、アイドルでなく、ちゃんとした彼女でもつくれよと思う。
そして、今はいないもう一人の幼馴染もなかなかのオタクである。
浩太郎は、アイドル。
幼馴染その二こと志信は、アニメというか声優オタクだ。
志信は、その声優にハマると出演作品をほぼ網羅する。
アニメ、CD、ゲーム作品、全てを商品化されていたら集める。
過去作品で入手困難なプレミアものも、集める蒐集力なのだ。
そして、志信も部屋は、浩太郎よりもドン引くすさまじいものである。
はじめて某キャラの抱き枕を見た瞬間、部屋の扉を即閉めたのが懐かしい思い出である。
しかも、その抱き枕のキャラの服が、なぜか肌けていたのはつっこんだら負けだ。
救いはキャラクターグッズには、そこまで手を出さない事、かな。
うん、出す時は恐ろしいことになるけどね。
「俺は帰るけど、お前はまだ残るの?」
ちらりと、親友たちに目を向ける。
「残る」
このまま帰ったら、「「放課後デート!!」」とか妄想のネタにされそうだし。
「りょーかい。暗くならないうちに帰れよ。志信が晩飯作って待ってるぞ」
浩太郎の背中を見送って、くるりと向きを変え親友たちに質問する。
「で、どこがおいしいって?」
「今の、やり取りがおいしかったでしょ?」
「つか、気付けよ、このおいしさに! なんで、晩飯作ってもらってんのよ!!」
絶対、変なフィルターがかかってると思う。
こんなやり取り日常茶飯事だし。
両隣に住んでいて、
朝、一緒に登校したり、
入手困難なチケットや、商品手に入れたりする能力の恩恵受けたり、
晩ごはん作ってもらったり、
たまに、お弁当もあるかな。
ん?
けっこう、おいしい……のか??
でも、あの二人が恋人とかは、想像できないです……。
幼馴染ってだけで、満足です。
私、彼氏には、もっと自分の趣味にある程度の節度を持った人を望みます。
という、そこそこおいしい設定の主人公のお話でした。
こんな設定でお話書きたいなーというのを、勢いで短編で書いてみました。
もう少しネタがまとまれば、長編も書いてみたいなと思います。
名前しか登場してない幼馴染の片割れや、ちゃんと主人公の名前とかも出してやらないと。笑。