第95話 ドッキリ的な
翌日、なぜか朝紗に先導されていた。
「どこ行くんだよ。修理屋は調べてあるぞ」
「いいからいいから」
なんかちゃっかり普段より気合を入れた私服。滅多に履かないフリル付きのスカートと淡い桃色のブラウス。こいつが女子らしい格好をするのも珍しい。2人で出かけるだけで、何をそんなにやる気になっているのやら。
それとも、彼氏ができたからデートの練習をしたいとか? まあ、朝紗に限って彼氏なんて出来てるわけもないだろうけど。
そして連れてこられたのはショッピングモールの入り口。
「服でも見るのか? 別にいいけど――」
「あ、やっと来ましたね」
「――……ん?」
どこか聞き覚えのある声がした。ちょうど、足先の方向。隣にいたはずの朝紗は、駆け足で視界外へと消えていった。
「朝紗さん、おはようございます。夜瑠君も」
「……なぜいる」
ぼそっと呟いてみるが答えは出てこない。朝紗は、元気に挨拶していた。もともと知っていたらしい。
顔を向けると、想像通りの顔がそこにいた。
今日も今日とて、嫌なくらいに私服のコーデを決めた妃奈は、珍しくポニーテールを結んでそこにいた。向こうの様子からしても打合せ通りって感じなんだけど。いや、そんなことはどうでもいい。
それ以上の問題が見つかった。
「おふたりともおはようございます。本日はお願いします」
「そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ! 私と夜瑠には気なんて使わなくていいですからね!」
「……お願いします」
及川さんも、いるんだけど。妃奈だけでも驚いたしどうしていいか分からないのにどうしろって言うんだよ。
朝紗を引き寄せて耳打ちする。
「どういうことだ」
「んー? 夜瑠が珍しく付き合ってくれるって言うから、楽しくしてあげようかなぁって」
「急に呼ばれたって動揺するだけなんだが? と言うかそもそもいつ連絡先を交換した。この前家来たときか」
「うん」
妃奈と最初会ったときは仲悪そうだったくせに。きっと妃奈に懐柔されたんだろう。俺をからかうことに全神経を注いでいるようなやつだ。利用できそうな朝紗を見て、何か取引でも持ち掛けたんだろうなぁ。
「ふふっ、やはり2人は仲がいいですね。秘密話は終わりましたか?」
「……はぁ、それで? どこ行くんだ」
「特段決め手はいませんが……夜瑠君が服に興味あるということだったので。私も夏服を見ようかなと」
「私もそうしたいです。自分で服を選んだことないんですよね」
「じゃあそうしますか」
…………。
ん?
「えっと、普段は誰が服を選んでいたんですか?」
「家の人が。服に詳しい人なので、私自身が悩まなくていいのは嬉しいのですけれど。お友達と一緒にお買い物するの、憧れだったんです」
えー……。その事実にすっごい驚きだし、それ以前にそんな初めてのお買い物を一緒にするのが俺でいいんですか? いや出来ること自体はすごい恐縮なんだけど……心の準備が出来てません。




