第94話 明日の予定
朝紗から即死の雨を浴びせられ、意気消沈していた俺に追い打ちをかけたのは後片付けをしていた朝紗の一言。
「コントローラー、壊れた」
「……は?」
思わず顔を上げて朝紗を見る。コントローラーを掴んでこちらを見るその目は、泣きたそうに震えていた。
「壊れたってどういうことだよ」
「スティックが反応しないの」
「マジか」
朝紗がコントローラーのスティックをカチャカチャ動かす。しかし、画面に映るキャラクターはびくともしない。
「即死の練習しすぎてイカれたぁ!」
「それ、この前買ったばっかりじゃなかったか?」
「そうなんだよぉ! まだ3か月も経ってない! 高いのに!」
「どうすんだよ。買い替えんのか?」
「そうするしかないでしょ。あとは夜瑠のしか残ってないんだもん。一緒に出来ないし……はぁ、明日買いに行こ」
「え、俺に言ってる?」
「当然じゃん」
どうして付き合わされなきゃいけんのだ。しかも、新しいの買ったらまた意気揚々と即死の練習するんだろうに。
「とりあえず修理に出すとかあるだろ。買い替えるより安く済むかもしれないぞ」
「どっちにしても付いてきてよぉ」
「なんでだよ……」
「わ、私が1人で店員さんとお話しできるわけないでしょ!」
「そんな情けないことをよくもまあ大っぴらに」
朝紗は俺みたいなカースト枠外と言うよりはれっきとした序列最下位気質。人と喋るときは緊張するし、人並みにやることをやろうとする。まだ常識がある分、変にみられるのを極度に嫌がる。
なら練習すればいいだろうに思うがそこは俺と同じ血を持つ妹。どうして両親が結婚できたのかが分からないくらいには人見知りの鬼なのだ。
俺はまあ、人目を気にしない分だいぶマシ。流石に及川さん相手とかは気にするけど、それ以外の外出で外見に気を使えるようになるほど成長したわけではない。最近は、まあ。少しずつファッションの記事とか見るけどよく分からないし。何気に服は高いし。
……。
「仕方ない、行ってやるよ」
「ほんと⁉ さっすが! こういうときだけは頼りになるんだから!」
「褒めるならしっかり褒めろ。あと、さっさと風呂入れ。修理してくれそうなところは調べておくから」
「おお、気が利くね! じゃあ任せたよ!」
風呂場へ向かって去っていく朝紗の背を見ながら、スマホを取り出す。修理屋を調べるついでに、福屋の場所も調べておこう。一応俺よりは詳しそうだし、朝紗のやつを買い物に付き合わせてやる。
これくらいの意趣返しはいいだろう。代わりに飯くらいなら、奢ってやってもいいし。




