第92話 兄妹
竜輝と一緒にゲームをやる約束をしてから2週間。
その間に生徒会の仕事もたくさんあった。特に、俺たちの高校は7月末に文化祭があるらしくそれ関連の仕事が多かった。その間にゲーム部の視察は終わり、報告もしっかりできた。会長も納得してくれたし達成感はあった。
その合間に竜輝とゲームを触ってみて大会の規模と近さも考慮しながらどれをやるか考えて、俺の得意分野も考えて3人一組のバトルロワイアルゲームにすることに決めた。
足りないメンバーは竜輝が見つけてくれるらしい。大会の日程はちょうど夏休み期間中の8月中盤。それまでにどうにかこうにか仕上げるために、ソロランクに潜る日々。
……だったのだが。
どういうわけか、俺は問い詰められていた。ゲーム部で竜輝と練習をしていて少し帰りが遅くなったある日の放課後。
家に帰ると、玄関前で腕組している朝紗がいた。何やら起こっているような顔つきで、どうしたんだろうと考えかけて、思い出す。今日、一緒にゲームをする約束をしていた。
しかしその頃には言い訳の余地もなく、俺はリビングにて正座を余儀なくされていた。
「夜瑠、約束したよね」
「……しました」
「で? 今何時?」
「7時……」
「ゲームどころか夜ご飯も冷めちゃったよ。で?」
「ごめんなさい」
俺は出来る限り額を下げて土下座している。
別に正座は嫌いじゃないけどフローリングだから普通に膝が痛いです。あと床冷たい。
「最近ずっと帰り遅いし」
「そ、それは生徒会の仕事とかで……」
「分かってるよ。でもだからって約束やぶるのはどうかと思うし。ご飯も、せっかく作ったのに……」
「わ、悪かったって……」
今日は両親が2人そろって帰ってこない日。だから早く帰って一緒にゲームしよう、と言う約束をしていた。それでも俺のほうが遅くなるだろうって言ったら、朝紗が夕ご飯を作って待っていると言ってくれたのだ。
なのに、俺が破ったわけだ。
恐る恐る顔を上げてみる。すると、朝紗は視線を逸らして腕を組み、不満げに溜息を吐いていた。
胸が苦しいとまでは言わないが、この状態の朝紗相手にふざけることは出来る気がしない。いつもの調子で喋ったら、本気で嫌われる気がする。
……それは、いやだ。唯一の妹。これからまだ何年かは一緒に暮らすのに険悪にはなりたくない。
と言っても、どうやって仲直りしたものか。こっちから何かを切り出すのは結構ためらわれる。でもなにも行動しないと平行線だしどうしたものか――
パシャ、となったのはスマホのカメラのシャッター音。驚いて顔を上げると、少しだけ口元を緩ませた朝紗がこちらにカメラを向けていた。
「あ、朝紗?」
「まあいいよ、面白い姿見れたし。あとでネットにあげておく」
「やめろよ⁉」
「うーん、じゃあ妃奈さんに送っておくね」
「それはそれで嫌だけど。と言うかなんで妃奈の連絡先を持ってるのか気になるけど。送る理由も気になるけど」
朝紗は口元を隠して笑ってる。考えてみれば、別に今からだってゲームは出来る。今日は金曜日、多少の夜更かしも醍醐味と言えるだろう。多分、別に本気で怒ってはなかった……んだよな?
でもまあ、今後は気を付けよう。笑ってる朝紗を見て安心してるってことは、俺はこいつに笑っていてほしいみたいだし。




