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第90話 ゲーマー

 昔とは言ったが、つい最近までそうだった。

 満たされていないわけじゃない。つまらないわけじゃない。

 何なら楽しくて退屈なんてしない毎日だったんだけど。


 それでも、やっぱり孤独だった。


 竜輝が眺める画面には、勝利の文字が大きく並んでいた。


「流石だな。アンランクなら危なげもない」

「まあな。次夜瑠やってくれよ」

「分かった。でもあんまり期待するなよ?」

「するに決まってんじゃん。ほら、早く早く!」

 

 竜輝に勧められて椅子に座る。キーボードもマウスもいつも使っているのとは違うもの。正直そこまで差が分かるわけじゃないけど、特にマウスの握り心地はだいぶ違う。パソコンの性能は、同じくらいだろうか。

 マッチメイキング中に設定を覗きつつ、余った時間で感度を合わせる。


「って、これずれてないか? 縦軸が調子悪いぞ」

「ん? そうなのか? あんまりそんな感じしなかったけど」

「俺は遠距離エイムばっかりだからな。ちょっとだけでも気になっちゃうんだよ。……でもどっちか分からないんだよなぁ。俺のがズレてるのかもしれない」

「マウス変えることないのか?」

「ないんだよなぁ。最初からいいの買っちゃって変え時見失った」


 竜輝が手元を覗き込んでくる。見たって面白いものじゃなさそうだけどな。どうせなら画面見ればいいのに。


「と言うか、結構普通の握り方するんだな」

「ん? どういうことだ?」

「うまいスナ使いって変わった握り方する気がして。そうじゃないんだなぁって」

「まあずっと独学だからな。それやった方が上手くなれるのかもしれないけど、今更変えられない」

「すげぇなぁ。それであの強さなんだろ? どれくらい練習したんだよ」

「あー」


 いつも家の中にいて、1人で遊んでいた俺を心配に思ったらしい親父がパソコンをくれたのが中1の時。本格的にミスガンを始めたのがその年末だから……。


「2年とちょっと?」

「はぁ⁉ たったそれだけ⁉ 独学でそんだけの実力付けるのに2年しかかからないとか才能でしかないだろ!」

「お、おう……ありがとな?」


 2年って、たったなんだ。俺結構長い間努力したなぁって気がしてたんだけど。

 いやまあ、今活躍しているスポーツ選手が、幼少期からそのスポーツに触れて来たって話は珍しくないからそれと比べたら短いのかもしれないけどさ。

 でも待てよ? 言ってしまえば俺もミスガンって言うスポーツで上位に立ってるわけか。人口が少ないマイナーゲームとはいえ、独学でそこまで上り詰めたとなると案外凄いことなのでは?

 俺はもっと自信を持っていいのかもしれない。


「まあ、とりあえずやってみるわ」

「おう!」


 誰かに見られながらゲームをするのは、この前みんなが来た時と合わせて2回目。ちょっとだけ緊張してしまうのは前と同じ。けれど、流石に気合も入る。

 魅せるプレイを意識して、少し頑張ってみるとしよう。

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