第9話 一般通過オタク、ファミレスに向かう。
「みんな、まだ時間あるか? もしよかったら夜飯も奢るぞ。ファミレスになるけど」
「俺たちはいけるよな?」
「もち行くっしょー!」
「ごちそうになります、稲生会長」
一年組はみんな行けるらしい。俺は及川さんが行くなら行く。
「少し待ってもらえますか? お母様に確認してきますので」
「ん? おう。ほかの奴らはどうだ?」
及川さんは一礼し、ちょっと離れたところでスマホを取り出した。さすがにそこは現代人らしく……ん? 人差し指? スマホを左手で丁寧に持ち、右手の人差し指で静かに捜査をしている、だと?
……まさか、機械音痴ってやつか? よくよく見ていると、電話をかけるのにも結構手間取っている様子。何度か小首をかしげてはアプリを消し、再度つけて挑戦していた。これは、手順を丸暗記させられてるやつだ。
「よし、分かった。じゃあ俺と日南と、1年たちだな。及川はどうだ?」
「あ、はい、はい。分かっております。はい、迎え? いえ、結構ですよ。はい……ありがとうございます。それではお母さま、また。……ええ、行けますよ」
「そうか! それじゃ、2年組はまた明日な!」
最終的に2年組は全員来ないことになるらしい。
となると残ったメンバーでまだよく分かってないのは、副会長の日南? さんか。長いポニーテール生やした切れ者、って感じ。会長がちょっとお気楽っぽいから、それを補えそうな副会長に見える。
というか、生徒会美形多くないか? 妃奈は目立たないけどまつげ長くて目鼻立ちはよかったし、莉弧は分かりやすい今時JKって感じ。よく分からなんけど多分メイクとかしてるし外見には気を使ってそう。日南副会長も美人、って言葉がぴったりの凛々しい顔の持ち主だ。
会長はいかついけどそれが強面っていうポジティブポイントになってるし、湊は第一印象通り美形だ。そこに及川さんを入れても超絶美少女だし……なおのこと片身狭いんだが?
なんて思ってると行き先が決まったらしい。稲生会長を先頭に移動が始まった。
あれ、待って? そういえば俺行くかどうか確認されてなくない?
「あ、あの……」
「乙崎君? ほら、行きますよ?」
……妃奈ぁ。お前神か? 敵とか言ってごめん。俺が戸惑ってるのを見てすぐさま手を差し伸べてくれるとか、マジで神だろ。
「あ、ああ。今行く」
「はい。あ、あとでロインのフレンドを交換しましょう。おすすめのボイストレーナーの一覧を送ります」
「お、おう」
こいつ、歌に味を占めてやがる。こんなに押し出してくるとは、もしかしたらやっぱり敵なのかもしれない。判断しかねるな。さらなる情報収集が必要かもしれない。
って、あれ?
「そういえば乙崎君、クラスはどこですか? 私と湊君、莉弧ちゃんとは違ったと思うんですけど」
「ん? あ、ああ。1組だ」
「ああ、文系クラスですか。私たちはみんな理系ですから、無理ないですね。確か及川さんも文系だったと思いますけど、違うクラスですよね? じゃあ2組でしょうか」
あれあれ?
「今度好きなアニメを教えてくれませんか? 私は最近見れてなくて、情報収集もできてないので」
「それくらいでよければまあ」
「あ。でもあれは分かりますよ。鬼殺の剣。西洋版桃太郎っていうキャッチフレーズが印象的で、この前莉弧ちゃんと一緒に映画まで見に行ったんですよ」
あれれれれ?
「それから――」
あぶれて、ない? どういうことだ。こういう移動中は1人になってしまうのが必然だったはずだ。実際さっき学校からカラオケに行くときもそうだった。けど、今の俺は1人じゃない。妃奈が付いてる。
「――という感じで、生徒会の仕事はちょっと大変ですけど、分からないことがあったら教えてあげますね」
「すっごい、ありがたい」
「ふふっ、そこまで言わなくても」
あの気まずい雰囲気を感じなくていいとかありがたすぎる。やっぱりお前は神だ、妃奈!




