第89話 ソロゲーマー
竜輝とミスガンの話で盛り上がっていると、あっという間に時間が過ぎた。俺は1人でも楽しめてると思っていたけど、案外誰かと語りたいことは多かったらしい。自分の立ち回りについてや対面の仕方とか、議論をするのも案外面白いものらしい。
「じゃあさ、相手がショットガンで、機動力重視の装備で詰めてきたらどうするんだ?」
「基本は詰め切られる前に迎撃だけど、詰め切られたらって話だよな。まあジグル繰り返してヘッショ狙って、削ったところを近距離武器、かな。それで何とかしてることが多い」
「流石だなぁ。よくそんな単発武器当たるよな。俺なんてショットガン頼りなのに」
「いやまあレンジ活かして戦ってるんだからそれでいんじゃないか? と言うかそれでランクを上げてきたんだろ」
「まーな。でも、アンチが広いところだとボコボコだし。正直ショットガン選だと辛いこと多いんだよな」
「それは俺も同じだぞ。いつでも当てられるわけじゃないし」
「ヘッショ率は?」
「45」
「そもそものヒット率は?」
「マップとかにもよるけど、80前後?」
「乙崎君、覚えてる当たり自慢に思ってるよね」
「当然じゃないですか」
いかに高いヒット率とヘッショ率を維持し続けるかが俺の向上心に繋がっていた。今の数字を出すのにどれだけ勝率を犠牲にしたことか。
「ちなみに佐藤部長はミスガンは?」
「ちょっとだけ。でもウチの部活はチームを組んで戦うゲームを主にしてるから、趣味程度かな」
「もったいねー。部長なら絶対すぐランクあがるのに」
「そういってもらえるのは嬉しいけど竜輝ほど才能はないし、それに実際に上手くなれても試合に出る余裕もないからね」
「……そうだよなー」
竜輝は椅子の上で胡坐を汲んで体を揺らす。どうやらかなり本気で悔しがっているらしい。おもちゃをねだる子どもみたいに口元をとがらせている。見た目通り中身まで幼いらしい。なんて口にしたら失礼すぎるので絶対に言わないけど。
それから部長はチームメイトのもとに向かって練習を始めた。交代の時間らしい。竜輝にもパソコンが回ってきて、俺たちはミスガンを始めた。
「みんなゲームに本気だし別にそれはいいんだけど、ソロゲーが否定されるのはもやるんだよなぁ」
「ん?」
見ていてくれと言うので竜輝のプレイを覗いていると、急にそんなことをぼやきだした。イヤホンを少しずらしていて、こっちの話を聞く準備もできているらしい。
「ソロゲーだってEスポーツに変わりはないはずなのに、こういうとこだと後回しにされる。部活なんだからチームゲーってのも分からない話じゃないんだけどさ、あーもあしらわれると萎えるよなぁ」
……竜輝の目はモニターに向かっている。適当なことをぼやきながら、すでに3連続被弾無しでキルしていた。頭はさえているし、手元に迷いはない。
それなのにどこか寂し気な姿が、俺の中で自分自身と重なった。




