第86話 ひと休憩
「ふえぇぇぇ疲れたよー」
「無事に終わってよかったじゃないか」
最終的に誰一人としておとがめは無し。全員が無事に報告会を乗り切った。
「お疲れ様です。夜瑠君もよく怒られずに済んだものです。私はどんなことをやらかしてくれるのかと半ば期待してましたよ」
「酷いなおい。いやまあ、ちょっと焦ったけどさ」
「ねー、かいちょーたちいつもより怖かったー」
莉弧の言うことももっともだ。初対面だともっと優しそうに見えたのに、今日はやけに視線が鋭かった。強面なのもあって普通にビビったし、そのせいで焦りかけたのだ。これが圧迫面接ってやつだろうか。違う気がする。
「まあ生徒会長としては信頼されているらしいしな、稲生会長。ウチの学校は別に選挙とかやんないけど、稲生会長でよかったって思ってる人は多い」
「人付き合いが得意で仕事が出来る。上に立つ人のお手本のようです。それに比べて」
「俺を見るな。そもそも比べられる言われはない。生徒会ですらないんだぞ」
俺だってあんなのと張り合うつもりはない。実際に生徒会に入るつもりだってないし。まあ、もし及川さんが生徒会長になった人間しか見ないというのなら検討しなくもないが。
なんていっても、人徳がなさ過ぎてなれる気がしないけど。
「私も上手く熟せたようで安心しました。皆さんのご迷惑にはなりませんでしたか?」
「迷惑なんてまさか。完璧だったよ」
「流石と言わざるを得ませんでしたね。毅然としていました。同じような機会の経験があったのですか?」
「あったと言えばありましたね」
「すっごー。やっぱりのれっちのおうちってすごいの?」
「んー、すごいと言っていいのでしょうか。普通の家だと思いますよ。少し変わった家柄だとは思いますけど」
そういえば、なんだかんだ及川さんの家については聞いたことがなかったな。華族かどっかの子孫なんじゃないかって勝手に想像してたけど、実際のところは分からない。
あんまり積極的に話す気はないのだろう。莉弧も何となく察したのか、それ以上踏み込むことはなかった。
もしもっと仲良くなれれば知る機会もあるのだろうか。
でもあれだろうか。もし本当にすごい家だったら知りすぎたら殺されるとかあるかもしれないな。君は知りすぎた、とか、勘のいいガキは嫌いだよ、とか。そしたら及川さんを連れて逃避行――
駄目だ。教室がテロリストに襲われた時の対処法を妄想するみたいに、ありもしないことの対策を考えている。時間と脳の容量の無駄だ。
「さて、まずはみんなお疲れ様。会長からも褒めてもらえた。今年の1年は出来が良いってな。手伝ってくれてる夜瑠と乃恋にも改めてお礼を言わせてくれ。もしよければ、今後も手助けしてくれると助かる」
「私でよければ、微力ながらお力添えさせていただきますよ」
「今更だ。いくらでも雑用を押し付けてくれ」
「2人とも頼もしいな。よろしく! 莉弧と妃奈も、頑張ろうな!」
「おー!」
「はい」
部活っぽいなと思いかけて、一応部活だったと思い出した。




