第83話 新しい日常
今日の授業中、ずっと今朝のことを考えていた。及川さんとの散歩。俺も案外、この辺のことについては知らないことだらけだったらしい。いろいろな道を歩くたび知らない店と巡り会えた。
でもそんなことの喜びより、お店を見つけるたびに嬉しそうに笑った及川さんの笑顔を、俺だけが見れたのが何より嬉しかった。
どうせ無理だし、本気で出来るとは思ってないけどこれを独り占めしたいって思ってしまった。グッズみたいに買えるならいくらでもお金を出すのに。それこそ無理な話なんだけど。
で、気づいたら放課後。授業内容なんて1つも頭に入ってない。明日からの授業ついて行けるかな……。
「よるっちー、生徒会の時間だよ」
「ん? ああ、莉弧か。今日なんかあったっけ」
「せんしゅーの総括。かいちょーたちが確認してくれたから」
「あー、そうだったな。今行く」
……ん?
「あれ、なんで迎えに来てるんだ?」
「んー? ぐでーってしてたから寝てるのかなーって」
「ああ、外から見えたのか」
見てみたら扉は開けっ放しだった。……あ、あれ? ちょっと待て。なんかすごいこっち見られてる気がする。君たち、この前ここに集まってた生徒会メンバー群見たよね? 今更、とは言えないか。まだ一回だけだし。
「じゃあ行くか」
「おけー!」
元気よく言った莉弧と共に教室を出る。視線がすっごい刺さってきている気がしたが多分自意識過剰なだけ。そもそも隣にいるのは莉弧だ。誰にでも優しく、誰とでも仲良くなれる1軍中の1軍、陽キャの頂点的存在だ。俺みたいとの一緒にいたって不思議には思われないだろう。
……いや、思われるか。俺でも普段教室にいるはずなのに、存在感ゼロのやつが誰でも知っているような人と一緒にいたら驚く。相手が可愛い人なら特に。
「あ、そうだ。この前はありがとね。パソコンかっこよかったよー」
「それほどでも。まあ、あんなんでよければいつでも貸すよ」
「ほんと⁉ やったー!」
莉弧は廊下の真ん中で両手を上げて喜んで見せる。普通に周囲の視線が向かってくるのでやめてほしい。恥ずかしくて顔が熱いです。一応言っておくけど、俺たちのペアってだいぶ異色のペアなんです。
「なんだっけあれって。よるっちがやってたゲーム。めっちゃうまかったやつ!」
「あー、ミスガン? まあ、それなりにうまい自信はあるけど」
ミスターガンナーとかいうちょっとネーミングセンスを疑ってしまうバトルロワイアルゲー。一応ランカー張ってた時代があるのでそこそこの腕前ではある。と言ってもゲームがマイナーだし、自慢できるようなものじゃない。自慢する相手なんていないし。
「あの」
「んー?」
不意に声をかけられた。すぐに莉弧が応じる。どうせ莉弧に話しかけているんだろうし俺は黙って――
「あんた、ミスガンやってんの?」
「え?」
――どうやら俺に話しかけていたらしい。




