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第81話 初めての友達

「あ、そーだ! よるっちの部屋!」


 そろそろ帰る、みたいな話が出始めたところで莉弧が声を上げた。


「ああ、パソコンを見せてもらう話だったか」

「そういえばそうだったな……」


 デスクトップパソコンを持ってる、って言ったら見せてほしいって言われて今日集合したんだった。


「正直これだけ遊んだ後だと見劣りするぞ。学校にあるようなのとほとんど変わらないし」

「そうなのか? ほら、画面がたくさんあっていくつもいっぺんにゲームしてるみたいな」

「モニターはふたつだけど、多分想像しているようなのじゃないな」


 絶対ハッカーか本業の株トレーダーの仕事風景を想像してる。俺のはどっちかっていうと暗がりで縮こまるアライグマとかそんな感じなんだけどな。かっこよくもなんともない。


 何なら、この例えはアライグマに失礼かもしれない。


「いいじゃないですか、見せてください。私もデスクトップには興味があります」

「買うのか?」

「そんなお金はありませんよ。いつかほしいなとは思いますけど」

「やっぱ高いのー?」

「まあ、それなりには。俺は父さんからのおさがりだけど」


 まさかもらえるとは思ってなかった。ま、父さんが趣味をやめたというか諦めたというか。譲ってくれたのは素直にうれしかった。おかげで今日まで寂しい思いはほとんどしてない。ちょっと前まで、ゲームが唯一の友達だったくらいだ。


「そこまで言うなら見せるけど、あんまり期待しないでくれよ。型だってそこまで新しくない」


 言って分かるかは知れないけれど、あんまり期待されても困る。念押しだけして、自室に向かう。流石に家の階段を何人も同時に登るのは難しいので列になって進んでく。

 そういえば、俺の部屋は5人も入れるほど広かっただろうか。一応掃除はして普段より広かったけど、俺と朝紗以外ほとんど入らない部屋だ。考えてもなかった。


 まったく、本当に信じられない。まさか今更、初めて友達を部屋に招くことになるとは。小3の時に初めて部屋をねだったのはなんでだっただろうか。1人で寝るって響きはどこか格好良かったし、思春期だった俺はプライベートスペースを欲しがったのかもしれない。

 あれから、結局一度も友達を入れたことはなかった。と言うか、友達が出来たことがなかった。世間一般的には小中学生の頃に終わりそうなイベントを、高1にもなって嬉しがってるとはなんとも恥ずかしい。


 社会には序列があるはずだ。

 そんな考えの片りんのようなものを、俺は小学生のころから持っていた。

 時に、それはカーストと呼ばれる。もとをたどればインドかどこかで使われていた制度だったはずだ。

 しかし、そのカーストに属さない例外もいる。


 そんな俺の名前は乙崎依瑠。このキラキラネームに触れられたことはこれまでに数えるほどしかなく、この年にもなって初めて友達を作った、元一般通過オタクである。

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