第80話 一般通過オタク、うっかり決意する
なんというか、及川さんは流石だと思う。尊敬だなんだって、本来なら俺が向けるべき言葉だ。
「あ、朝紗さんが勝ったらしいですよ」
人生ゲームで遊ぶ4人を見て、嬉しそうに笑う及川さん。人が遊んでるだけなのに、自分事のように嬉しそう。朝紗だけじゃない。俺含め他の生徒会メンバーだって、及川さんからしてみれば出会って半月程度の人間だ。それなのにみんなに頼られて、みんなと仲良く遊べて。
話からして高校生になってようやく外に出られるようになった感じだった。それなのに自分から声をかけたり、積極的に知識を得ようとして。どんなことでも嫌な顔せず応じて、熟して。
毎日朝早くから散歩して、街の地図を作るって目標もあったはずだ。
それに比べて俺はどうだ。結局朝の散歩は三日坊主。自分から何かを使用だなんて思わないし、流されてばっかりだ。気の利いた事を言うことも満足にできない。及川さんには申し訳ないけど、やっぱり俺はそんなに立派な人間じゃない。
……でも、だからこそ頑張らなきゃいけない。及川さんに嘘をつかせるわけにはいかない。所詮俺なんて何を頑張ったってうまくいかないかもしれない。それでも、頑張ったことを見ていてくれる人が、今の俺にはいるはずなんだ。報われなくても、上手くいかなくても。一緒に手伝ってくれて、笑って終わらさえてくれる友達が。
最初で最後の一目惚れを、ただ見てるだけで終わらせる。心のどこかでずっとそう思ってきた。いつもアニメキャラとかゲームキャラに抱く、一方的な憧れと同じ。推しってだけの、つもりだったはず。
「好きです」
「え? 乙崎さん、何か言いましたか?」
「……いえ、何も言ってませんよ。独り言です」
今度はスマブラ始めた4人の声に紛れるように言ってみる。聞こえてたら聞こえてたで、ゲームがって誤魔化すつもりだった。聞こえてないならそれに越したことはない。
心の中で息を吐きだす。軽い気持ちで言ってみたけど案外緊張するもんだ。でもやっぱ、口にしなきゃ始まんないもんな。告白とはちょっと違うけど、俺なりの宣戦布告。及川さんが言い出したことだ。どれだけ無様でみっともなくても、俺は俺らしく頑張ってみる。
せっかく生徒会の手伝いなんてことも始めたんだ。今までの俺なら絶対しなかったようなこと、やってみるチャンスじゃないか。
及川さんは不思議そうに俺の顔を見た後、4人のほうに視線を戻す。
今はそのままでいい。と言うか、そのままでいてほしい。今の俺じゃ、情けなくって見られたくない。どうせなら、少しはマシになった俺を見てほしい。それまで横顔を見つめるのは俺の側だけがいい。
まずは、具体的な目標を見つけるところから始めないとな。




