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一般通過オタク、うっかり美少女に一目ぼれしてしまう  作者: シファニクス
第1章 一般通過オタク、一目ぼれする
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第8話 一般通過オタク、及川乃恋と出会う。

「及川さん、のほうはどうです? 雰囲気とか」

「いいと思いますよ。先輩方皆さん、よくしてくださってます。歌を褒めてくださいました」


 嬉しいです、と頬を抑えながら笑みを浮かべた。


「へぇ。及川さんはどんな歌を歌うんですか?」

「私は演歌ですね」

「演歌ですか。…………いいですね」


 待って。この人雰囲気だけじゃなくて趣味も古風なのか⁉


「でも、皆さんがよく聞くような洋楽は分からないですから、一緒に楽しめないのは残念ですね」

「それは残念ですね」

「はい」


 …………。……? ……あれ、終わり? あ、待って。なら俺が喋るから。ちょっと待ってね、話題考えるから。


「私、そろそろ戻りますね。また後でお会いしましょう、乙崎さん」

「あ、はい。また」


 及川さんは綺麗な姿勢でお辞儀して、背中を向けて去っていった。俺はその背中に小さく手を振ることしかできない。

 なんか、無性に情けなくなってきた。


 ……いやいや、少し話せただけでも大成果だろう。及川さんは第一印象通りっぽいことは確認できたし。


 うん、頑張っただろう。やることはやった、いったん戻るとするか。


「いや、マジでこれなんなんだよ」


 正直自分で分かんない。なんで俺、こんな心臓バクつかせてんだろ。なんか可笑しくてにやけちゃうくらい正常じゃない。なんか顔熱いし。このにやけが収まるまで戻れないぞ。

 もう1回、深呼吸だ。

 よし、真顔をキープ。俺みたいな顔の奴に変な笑顔は似合わない。


「すみません、遅くな――」

「やばっ、やっばっ! ひなっちめっちゃアガる!」

「マジでうまいな歌! え、ファンになるぞ俺⁉」

「いいなぁ。学園祭で生徒会のパフォーマンスとして出さないか?」

「ふふっ、ありがとうございます。けど、さすがに言いすぎですよ? 私なんてまだまだ……あ、乙崎君、お帰りなさい」


 ……やはりお前は敵だ妃奈。どうしてこんな俺に気まずい思いをさせるんだ。そのうえで視線を向けさせるな。このまま気づかれなければ何とかなったかもしれないのに……!


 それからしばらく続いたカラオケタイムを、俺は及川さんの瞳を思い出し続けることで耐えきるのだった。

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