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第79話 見えないものと見えるもの

「ちょっと湊とひなっち何人子ども産むの⁉ ウチなんてまだ結婚もしてないー!」

「ま、まあ莉弧さん。総資産が一番多いのもマスを進んでるのも莉弧さんですし」

「ぎゃ、逆に私が聞きたいですよ。どうしてこうも子だくさんなんですか……。借金が増える一方じゃないですか……!」

「俺を睨まれても困るぞ⁉ 俺だって好きでこのマスを選んでるわけじゃない!」


 あれが修羅場ってやつか。

 流石はイケメン。たとえ人生ゲームでも女の子を狂わせてしまうものらしい。


「皆さん楽しそうですね」

「ん? ああ、そうですね。次交代します?」

「いえ、私は十分遊びましたので」


 ダイニングテーブルを挟んで座り、リビングで騒ぐ4人を見守る。

 どうにかして及川さんとの時間を作ってみたはいいものの、やっぱり話題は続かない。俺もそうだが、やっぱり及川さんも会話続かせるのが下手というか、続かせる気がないというか。

 俺と話すのが嫌……って、感じじゃない。はず。多分。きっと。メイビー。気のせいであってほしい。お願いします。気のせいであってください。


「……妹さん、似てますね」

「いやーほんとそうですよねその通り……ん? 朝紗が似てる? 俺とです?」

「はい。楽しそうです」

「あー、まああいつもゲームは好きですし。普段友達とかと遊ばないから、はしゃいでるんだと思いますよ」


 外見はともかく、性格は似てると思う。いや、間違いなくあいつのほうが冷たいし凶暴だけど。趣味は合うし、インドアだし、陰キャだし。友達少ないのも多分一緒だし。


「いえ、そうではなくて。一緒に遊ぶ皆さん、楽しそうです。乙崎さんと同じく、人と人との潤滑油のような振る舞いをしています。私にはとてもできそうにありません」


 ……え? 今褒められた? それとも油みたいにぬるぬるしてるって悪口言われたの? いやいやさすがに後者なわけない。じゃあ褒められた? なんで? 人との潤滑油ってどういう意味? え? 俺そんなにコミュニケーションをスムーズにしてる? むしろ詰まらせてない? 


「なんといえばいいのでしょうか。常に適度な温度感で、周りを見ていて」

「いやいや、俺なんて全然、そんなんじゃないですよ」

「私にはそう見えている、と言う話です。僭越ながら、乙崎さんはとても素敵な人だと思いますよ」

「っ⁉⁉⁉⁉⁉⁉」


 は⁉ ちょっと待て今なんて言われた⁉ 素敵な人⁉ 誰が⁉ 俺が⁉ 俺がっ⁉⁉⁉ いやマジで待って心臓バックバクだって今にも爆発しそう。多分赤い線切れば止まるよ出血多量で死ぬけどとかじゃなくて!

 やばいやばい絶対顔ニヤけかけてるてかニヤけてるかもしれないキモいかもしんないでも嬉しくないわけないだろ及川さんに褒められたんだぞ⁉ あー絶対顔赤いあーもうどうしよどうしょうもないよなせめてお礼くらい言わなきゃ!


「あ、りがとうございます。そんな風に言ってもらえたのは、その、初めてで」

「謙遜しなくていいと思いますよ。私の目も確かなものではありません。でも、乙崎さんのことは尊敬できる人だと思っています。……なんて、急に言われても困りますよね」


 うんほんと困るマジで困るどうしようマジどうしょうもない!

 ああもう結局会話なんて続かねえよ! こんな浮かれたまま喋れるわけないだろ誰か助けてくれ!!!!

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