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第78話 兄妹

 本来の目的も忘れたまま時間は過ぎていく。途中お昼ご飯を買い出しに行ったりしながら遊び続けること数時間。俺の家の中にここまで遊べるものがあったとはと驚いていたところ、階段を下る足音が聞こえてきた。


 俺以外は正体が分かっていない。足音に気づいた人から順に手を止めて、階段がある廊下のほうに視線を向けた。


 ほどなくして、扉が開く。


「……え、何。なんでこっち見てる、んですか?」


 我が妹、朝紗である。

 予想外に注目されていることに驚いてか縮こまった朝紗は、足早に俺の背中に隠れた。人を盾にするとはいい度胸だ。


「妹か?」

「わあ、かわいー!」

「ご家族がいたんですね。こんにちは、お邪魔してます」

「初めまして。お会いできて光栄です」

「ぇ、ぁ、はぅ」


 一気に話しかけられてますます委縮する朝紗。血は争えないとはまさにこのこと。朝紗も根っこは陰キャなのである。


「これは見ての通りうちの妹、朝紗だ」

「これとか言わないで」

「でこっちは学校の友達たちね。どうせ名前覚えられないだろうけど一応自己紹介してもらってくれ」

「べ、別に覚えられるし」

「クラスメイトの名前言える?」

「……覚えられるし」


 目を逸らすな。


「湊だ」

「莉弧だよー!」

「妃奈と言います」

「及川乃恋です。よろしくお願いします」

「お、乙崎朝紗、です。愚兄の妹です」

「誰が愚兄だおい」


 どこで覚えたんだよそんな難しい言葉。俺でもギリギリ分かるかどうかだったぞ。ほら、莉弧と湊なんて首を傾げてるぞ。……え、いや妃奈と及川さんは分かるのかよ。さすがだな。


「で? 何しに来たんだ?」

「おなか減ったからご飯食べに来たんだよ。邪魔しないからいいでしょ?」

「そりゃ別にいいけど……どうせなら遊んでかないか?」

「いやいや、悪いし……って、なんでそこの人たち目を輝かせてるの? え? 私ってレアモンスターか何かだった? 狩られる? 狩られるの?」

「狩られない狩られない」


 何がどういうわけか、湊と莉弧がすごい形相で朝紗を見てる。


「似てる?」

「似てない」

「でもさ、こー、目のあたりとか」

「いやいや」

「よく見てみれば口元が」

「全然」


 今度は俺を見て、かと思ったらまた朝紗を見て。そんなことを繰り返して何か言ってる。と言うか聞こえてるけど。


「いやまあ似てないのは分かるけど」

「私たちって血繋がってるよね?」

「繋がってる繋がってる。うろ覚えだけどお前が母さんから生まれたとこ見たはずだぞ」

「そっか。……まあ、私お母さん似だし。夜瑠お父さん似だし」

「ってことだ」

「ふーん」

「まあせーべつ違うし。そーゆーこともあるよね」


 と言うことは莉弧とその兄弟は似てるってことか。ぜひ1度見てみたいな。


「じゃあ、私はこれで」

「まあ待ってって。話を聞かせてくれよ。夜瑠、あんまり自分のこと喋んないからさ」

「そーそー! さっきじんせーゲーム見つけたしさ!」

「えっ⁉ ちょ、ちょっと待ってください! せめてお昼ご飯を!」


 ……恐ろしき陽キャたち。朝紗がさらわれてってしまった。

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