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第77話 次の約束

 及川さんは数秒経ってようやく現状を理解したらしい。急に顔を赤くして身を起こした。


「すみません! 私、何をして……っ!」

「あ、ああいや、気持ちは、分かるので。大丈夫です」


 何が大丈夫なんだろう。何もだいじょばない気がする。でもだからと言って責める理由もないし、むしろこちらが感謝しないといけないくらいで。と言っても突拍子もなく感謝を口にすると及川さんをさらに動揺させてしまうのは目に見えているので何も言えない。となると結局何もだいじょばないままなんだけどどうしよう。

 うん、どうしようもない。


 と言うか、及川さんもあんな表情をするんだな。普段の凛としている表情もいいけど、恥じらいの表情もギャップがあっていい。いつもの綺麗、って感想から可愛いって感じになってて……って、何を冷静に考えてるんだ。


「っと、そうだ。もし及川さんさえよければ、いつでもゲームをしに来ていいですからね。俺、どうせ暇ですから」

「本当ですか? それは素敵です。ぜひそうさせてもらいますね」


 無理やり話題を変えれば、及川さんは両手を合わせて嬉しそうに笑ってくれた。気まずい雰囲気を突破して次に遊ぶ約束もできた。これで一石二鳥……ん? 次に遊ぶ約束?


 次に遊ぶ約束ってことは、また家に来る約束ってことだよな。また来てくれるの? 誰が? どこに? 及川さんがここに? あの及川さんが、俺の家にまた来るの? ゲームしに? 1人で? なんで?

 ああ、俺が誘ったからか。


 何やってんだ俺。勢いと流れでとんでもないことしてくれたな。追い詰められた人間が何をするか分からないって本当だったんだな。


 いや、うん。普通に勲章もの。だって及川さんが家に来てくれるんだよ? しかも2人っきりだよ? まあ親とか朝紗とかいるかもしんないけどさ。だとしてもでしょ、普通に。ああもうほんと神。勢いだけの行動にここまで感謝することがあるとは思いもしなかった。


「今度来た時には、他の皆さんに負けないよう頑張りますね」

「……あ、うん、そうですね。俺も手伝いますよ」

「はい、ありがとうございます」


 ……知ってた。そりゃそうだよな。及川さん的に1人で来る理由ないよな。うん、知ってた。


 ま、まあでも次の約束をこぎつけられただけでも儲けものだ。

 成長した、えらいぞ、よく頑張った。


「そろそろお昼ごはんに……え、なんで泣いてるんです?」

「な、泣いてなんてない。目にゴミが入っただけだ」

「えぇ……本当に何があったんですか?」


 たとえ泣いていたとしても自分の成長に喜んで出た嬉し泣きだ。決して及川さんとの2人きりが無くなったことが悲しかったわけではない。

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