第75話 おうちパーティー
「お邪魔しまーす」
「こんにちは、及川さん。お邪魔しますね」
「よっ。妃奈はもう来てるのか?」
「ちょっと前にな」
少し後ろを伺う。先ほどどたばたと階段を駆け上がっている音が聞こえたし、多分朝紗は部屋に退避したのだろう。
「いったんリビングでいいか?」
「おっけー! うわー、綺麗なお家だね」
「そうか? 普通だと思うけど」
3人は続々と家に上がってくる。
あんまり意識しないように、とは思っていたけれど、どこか自分の居場所に土足で踏み入られたような感覚はある。いや、少し違うな。セーフティーエリアが少なくなっている、だろうか。
信頼してないわけじゃないけど、全部を知られるのは少し怖い。
なんて、家に上げるだけなのだけど。
「あ、ひなっちおはよー!」
「やっぱ先着いてたんだな」
「はい、おはようございます」
なんて挨拶を交わしているのを横目に、キッチンへ。一応お茶くらい出したほうがいいよなぁと思いつつ冷蔵庫を開く。
「って、えぇ……」
昨日まではなかったと思う。
パーティーとかでよく見る2L入りのペットボトル。あれがたくさん入ってた。麦茶と緑茶、その他数種類のジュース。いつの間に買ったんだろう。多分、俺が友達を呼ぶって聞いて買っといたんだと思う。
まったく、この息子ならあの親か。張り切りすぎというかなんというか、体力の使い方を間違ってる気がしないでもない。
「みんな飲み物は何がいい? 一応、親がいろいろ用意してくれたらしいんだけど」
「お、マジで? 入れ物は? 俺ジュース持ってとくぞ」
「助かる。紙コップでいいか?」
「全然いいぞ!」
湊は2Lのペットボトルを数本、軽々ともってダイニングテーブルへ向かった。さすがの筋力。俺じゃ1本が限界だ。……鍛えたほうがいいな。
棚の中から紙コップの束を見つけて、ついでに紙皿も。お菓子を分けるのにちょうどいいよな。
「って、なんかパーティーみたいになっちゃったな……」
まったくそんなつもりはなかったのだが。
パソコンを触ってみたいというから貸すだけのつもりだったのに、お菓子にジュースでパーティー気分だ。久々にコンシューマーゲームでも引っ張り出すか。あれなら複数人で遊べるし。
紙コップと紙皿を運び終えて、テレビの隣の棚をあさる。記憶通り、ゲーム機があった。
「何か、ゲームでもやるか?」
「やるー!」
「モモ鉄とかか?」
「やはりすまぶらですよ、すまぶら」
「私、やったことないですけど、大丈夫ですかね?」
「もちろん。分からないことがあったら教えますよ」
少しだけ楽しくなって、本気を出しすぎてしまったのはまた別のお話。




