第71話 部活動
それからもいくつかの運動部を回った。曰く、部費の多い順らしい。
もともと何日かに分けて行う予定で、次で今日の最後。体育館に向かった俺たちは、バスケ部の視察を始めた。
「ボールは足りてそーだよね。壊れてたりとかもしてない?」
「そうですね。少し柔らかいものもありますが、空気を入れれば……あ、空気入れはありますか?」
倉庫の中を点検し、部員と会話しながら作業を進めていく2人を端で眺める。
一応、スコアボードを眺めるふりをしながら。
「あれ、莉弧だー! ねね、バスケしてかない?」
「えー? 駄目だよー。せーとかいの仕事だからさー」
「いいじゃんいいじゃん! ね、部長もいいでしょ?」
「まあ、休憩しようと思ってたしその時間なら」
「やたー!」
「えー、もー、仕方ないなー。のれっちよるっちごめんねー! ちょっとだけ付き合ってくる!」
「はい。こちらもすぐ終わりますから」
「あー、行ってらっしゃい?」
友達なのだろう。莉弧がバスケ部員に誘拐されていった。まあ、莉弧運動出来そうだったもんな。いいよな、出来ると。こういう時軽く遊ぶ、みたいの出来て。俺には無理だ。
「さっきからセンチだなぁ、俺。憧れるとか羨ましいとか――」
「乙崎さんもそう思いますか?」
「――っ」
気づけば口に出していたらしい。しかも、それを及川さんに拾われた。思わぬ共感の言葉に息を飲む。
「私、あんまり運動とか外出とか、出来ていませんでしたから。高校生になった今でも、こうして生徒会のお手伝いをする程度」
「……体、弱いんですか」
「大したことでは、無いんですけどね」
まるで、お姫様に憧れる少女のような。それか、宇宙を夢見る少年のような。そんな、キラキラとした輝いた目でグラウンドのほうを眺めている。
もっと的確な予想をするんなら、外の世界に憧れている箱入り娘だろうか。なんとなくそんな気がする。性格とか、事情とか。そういうの色々見ても、そんな気が。
「乙崎さんは何か趣味がありますか? 私は以前も言った通り映画視聴などです」
「俺も好きですよ、映画とか。あとはアニメとかゲームとか」
「いいですね。私もインドア派です。一緒ですね」
「一緒、なんですかね」
俺みたいな生粋のオタクと及川さんを一緒にしてもいいのだろうか。そりゃあ、フィクションとか創作物が好きで、普段家にしかいないって意味では一緒なのかもしれないけど。
「……及川さんはやってみようとはしないんです?」
「やりたくても、体が弱いので出来ないんですよね。ここ数日は、散歩もできていませんし。あとちょっとなんですけどね、地図の完成。来月には、お店巡りも始められるでしょうか」
及川さんは、両手を胸の前で握り込む。
胸に抱く期待と、頭に浮かぶ空想。それらを嚙み締めるように、抱き込むように。




