第70話 初仕事
「じゃあ、昨日まとめて資料を基に、各部の視察を始めるぞ」
放課後、再び資料室に集まった俺たちに湊がそういう。今日は及川さんも一緒だ。
「ってわけでくじ引きタイム!」
「いえーい!」
パチパチパチ、と2人分の盛大な拍手と3人分の小さな拍手が響いた。
「ルールは簡単。この中に1から5の数字を書いた紙が入ってる。それを1人ずつ取ってもらって、最後に一斉に開く。偶数組と奇数組に分かれて視察に行くぞ!」
というゲームのチュートリアルにありそうな説明が入ったのち、くじ引きが始まった。順番決めなどは特になく、湊、莉弧、及川さん、妃奈、俺と言う、おそらくはやる気がある順に引くことになった。
「さあ、せーので番号言うぞ!」
「はーい!」
「せーの!」
という掛け声に合わせて、全員が紙を開き、示し合わせる。
「えっと、ウチは3番!」
「俺は2だな」
「私が4ですね」
「それで俺と及川さんが1、5と」
「はい、そうです」
という結果。
「じゃあ俺と妃奈、莉弧と乃恋と夜瑠の2グループだな」
「分かった! じゃあ早速、しゅっぱつ!」
及川さんと一緒になれたことを喜ぶ間もなく出発し、最初にやってきたのは野球部のところ。
「せーとかいでーす! 視察に来ましたー!」
「お忙しいところ恐縮ですが、部長の方、あと顧問の先生はいらっしゃいますか?」
……そういえば忘れてたけど、各部を回るわけだもんな。その度に人と会って、挨拶して、いろいろ聞いたりするんだもんな。
俺、役立たずじゃねえか。
と言うわけで莉弧と及川さんの後ろについていく。
「ご協力ありがとうございました。今日はこれで失礼しますね」
「また来ますねー!」
終始黙り込み、2人の護衛と化したまま1つ目の部活が終わった。
見て回ったのは主に部活動で使う道具の数と質、あとは状態。他には部室とグラウンドの状態。それらを記録して、後日部員の数と部費の量などをもろもろ精査するらしい。こんな難しい仕事、生徒に任せきりにするのはどうなんだろう。
でも、いろんな部活を見て回るいい機会だし、思いのほか楽しかった。自分が通う学校の部活動の光景なのに、知らないことがたくさんあった。運動部だから分かりやすかっただけかもしれないけど、みんな必死に汗をかいて、辛そうなほどに頑張って。それでも楽しそうに笑っているのを見ると、こういうのが青春なんだ、って少し羨ましくなる。
まあ、正直言って俺の運動センスじゃこれについていくのはまるで無理。人には得手不得手があるんだから、憧れたって――
「楽しそうでしたね」
「ん?」
「いえ、皆さん、真剣に取り組まれていました。私にはああも熱意を込めて取り組めることはありませんから、楽しそうだなと」
「確かに! でもでも、ウチらはせーとかい頑張ってるから!」
「それは……その通りですね。形は違えど、努力することに意味がある。ならば私も、あの方たちのようなことをしているのかもしれません」
「そーそー! だから、張り切って次も行こー!」
「はい」
――仕方がない、って、思おうとしたんだけど。
そういうの全部どうでもよくなって、校庭を眺めて嬉しそうに微笑む及川さんの横顔に、俺はくぎ付けになっていた。




