第69話 2人きりの帰路
作業が終わって帰り道。何とか2時間ほどで作業を終えて、駅に向かってる。正直机に向かいっぱなしで目が疲れた。普段から似たような体勢で過ごしているはずなのに、慣れないことをするとこうも疲れるものなのだろうか。
凝り固まった肩をどうにかしようと、大きく伸びをする。
「何をこのくらいで疲れているんですか。生徒会の事務作業は、こんなもんじゃありませんよ」
「うげ、マジかよ。この手の作業は無理だな、パス」
「人手不足って言ってるでしょう。嫌でも働いてもらいますよ」
「パワハラだぞ」
「まさか。賃金を支払っていないので業務ではありません」
「企業じゃないから良いってか。あまりにも暴論だろ」
「ボランティア活動はいくらでもしてくださっていいですからね?」
いい笑顔で何を言ってるんだ、こいつは。現状上司にしたくない人ランキング1位である。そもそも俺は良く知らないところで決まったよく分からない制度によって強制的に働かされているんだぞ。
「まあ気負う必要はありません。今日の作業、想定よりも早く終わりました。本当は及川さんの協力が得られないことを惜しく思っていましたが……夜瑠君が案外やることが分かっただけでも儲けものです」
「そりゃどうも。これからも散々こき使ってください」
「ええ、お任せを。いくらでも使い倒いしてあげます。それこそボロ雑巾のように」
「とても対等とは思えない言葉遣いだな」
「あくまで比喩です。他意はありません」
どうもまあ、お言葉がキツイキツイ。仲直りしたはずなんだけどなぁ、どうしてこうも敵意を向けられてるんだろう。別に悪い気はしない。気兼ねなく話しかけてくれているのは違いないんだろうし。
そのうち俺のガラスメンタルが砕かれないかだけ心配だ。
「そういえば電車は同じでしたね」
「ん? ああ、そうだったな」
初めて会った日、ファミレスの帰りに判明していたはずだ。俺と妃奈、及川さんは同じ電車だったはず。
「それで思い出したけど、及川さん大丈夫だと思うか? 体調悪くって、今日は私用って言ってただろ? 病院行ったんじゃないかなと思うんだけど」
「……まあ、心配ではありますね。夜瑠君にしては珍しく配慮が出来て素晴らしいと思います」
「え、なんでそんな心にもなさそうな声音なの? 怖いんだけど」
「心にもないなんてことはありませんよ。本音です」
「いやいや、絶対怒ってるだろ。俺なんかまずいこと言ったか? デリカシーなかったとか?」
「デリカシーなんて最初からないでしょう。今更気にしても遅いですよ」
「そ、それはそうかもしれないけど……!」
妃奈はすぐ速足になって先に行ってしまった。それを慌てて追いかけて、同じ電車に乗って。駅について別れるまで、どういうわけか口を利いてもらえなかった。
一体全体、何が気に障ったのだろうか。




