第67話 お仕事
そして来たる放課後。
送られていた集合場所に向かう途中、及川さんを見かけた。ちょうど帰るところらしく、カバンを持って階段に向かっている。
相変わらず惚れ惚れするような横顔。窓から吹き込んできた風が、絹みたいな黒髪を揺らす。少しずつ暖かくなってきた日差しがその隙間を好き抜け、幻想的な影を床に作る。
もう、ここまで美しいと見ているだけで心が穏やかになる。そこら辺の芸術作品よりもよっぽど価値があると思う。国宝レベルじゃないだろうか。人間国宝って言葉は及川さんにこそ相応しい。
……?
「なんか、元気なさそうだな」
影が、顔にもかかっているように見えた。普段はもっと背筋を伸ばして、顔もまっすぐ前を向いていたと思う。でもなんか、今は少し俯いている、気がする。
そういえば昨日は具合が悪くて来れなかったんだったか。病み上がりで体調が優れないのかもしれない。今日の午後の予定も、病院に行くとかなのかも。
声をかけたりして、あんまり邪魔したらよくないよな。
出会わないようにして、遠回りして集合場所に向かうことにした。
そして集合場所。それは生徒会室の隣の、資料室と言う部屋。今までのいろいろな記録の資料や、行事の時に使う道具がしまってある部屋らしい。
暗めのカーテンが閉め切ってあり、どこか埃っぽい。ものが多くって、この前妃奈が閉じ込められた倉庫にも似ているけど、あそこよりは整ってる。
「さあ、さっそく始めるぞ。今日はとりあえず去年の総会で議決された各部の部費。それがちゃんと正しく使われているのかを確認する必要があるから、まずは表にまとめる。それと、部活ごとの配役もだな。俺たちは5人だから……2、3でいいか?」
「いーともう!」
「私も賛成です。組み合わせはどうやって決めますか?」
「くじとかでいいんじゃないか? ほら、ちょうどここにあるぞ」
と言って、湊は棚の上に置いてあったくじ箱を取り出した。一番くじとかでしか見ないやつだ。
「わー、そんなものあるんだね」
「イベントとかで使うんだろ? まあ、これはあとでやるとして。じゃあ、それぞれ資料を確認してくれ。一応前年度と比べて部費が上がったか下がったかなんかも考慮しないといけないから、それについてもまとめてほしい。ここに部活動のリストがあるから、上から調べてってくれ」
「りょーかい!」
「分かりました」
「……うす」
単純作業、苦手なんだよなと思いつつ。
こういう役割を熟すのも悪くはない、とも思う。今まで誰かに何かを任せられることなんてなかった。家に帰ってゲームをしたり、ラノベを読む日々。もちろん楽しいし面白いけど、それとは違う何かがある。
それでもこういうのは苦手だなと思いながら、作業に集中することにした。




