第63話 告白
観覧車の中、俺は妃奈に事情を説明する。もちろん、こちら側のマイクはミュートだ。
「盗み聞きってことですか?」
「趣味が悪いですね。あっちが聞かせてきてるんだから仕方ないだろ?」
「そうですけど……莉弧ちゃんも変わってますね、告白を聞かせたがるなんて」
「まあ、俺たちに相談したわけだし。結果がどうなるかを知る権利くらいあるんじゃないか?」
なんて狩る口を叩きつつも、正直だいぶ緊張していた。人の告白シーンなんてまともに見たことないし、恋愛にも疎い。初めてってのは誰だって緊張する。それがたとえ、自分事じゃないとしても。
「……その通りですね。おとなしく聞いていましょうか」
なんて妃奈が言ってる間に、莉弧と湊の雑談は途切れていた。
何度か莉弧の息遣いが聞こえる。きっと、言いだそうとして言い出せない。そんなのを何度も繰り返してるんだろう。
観覧車は、そろそろ超常に到達しようとしていた。
大きく息を吸う音が聞こえた。
『ねえ、湊』
『ん? どうかしたか?』
「っ! 来ました!」
なんだかんだ言っても気になっていたらしい。妃奈がスピーカーモードにしたスマホに顔を近づける。
『ウチ、いーたいことがあるの。ちょっとだけ、まじめな話なんだけど』
『分かった、ちゃんと聞く』
声のトーンが変わる。普段あんだけはしゃぎまくってる2人からは、あんまり想像できない落ち着いた声。思わずこっちの体も強張る。
『……ウチ、湊のことが好き』
『っ!』
「言った! 言いました! はっきり言いましたよ!」
「お、おう……なんかこっちまで照れるな」
俺が言われたわけじゃないと分かり切っているが、少しだけ鼓動が早くなる。
『今ウチはいろいろやりたいことあってさ、勉強とか家族のこととか、生徒会のこととかいろいろ。ちょっとだけ忙しっくて』
『そうだな』
『だから、だからね。……ウチ、湊のことがずっと好き。だからウチが高校卒業して、その時湊がウチのこと嫌いじゃなかったら、付き合ってほしい』
沈黙が流れる。それはスマホの向こう側も、こっち側も一緒。
はっきり言って、やっぱり意味が分からない告白だ。今から約3年後の話になる。湊からしてみればめちゃくちゃだろう。好きって告白されたかと思えば、しばらく待ってくれって言われてるんだ。
妃奈も押し黙っている。あまりうまくいくイメージはわかない。
実際、湊は即答できない。1分、2分と経ち、そろそろ1週が終わるころになって。
ようやくスマホの向こう側から、言葉が聞こえた。
『ああ、覚えておく。そして卒業式の日に、答えを出す』
間髪入れずに返事が入る。
『うん! そーして!』
観覧車の扉の開く音がする。こうして、一組のカップルが、成立(仮)した。




