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第62話 観覧車

 それからもいくつかのアトラクションをめぐって遊んだ。込み合っていたのは最初のジェットコースターだけらしく、他は案外あっさり行けた。

 そうして遊び倒すこと、数時間。


 そろそろ帰る時間が近づいてきた。


「いろいろ遊んだねー!」

「な! 最後まだ時間ありそうだけど、何か乗るか?」

「んーっとね」


 これだけ遊び倒したというのに、莉弧と湊はまだまだ元気そうだ。その有り余る体力が羨ましい。正直、こっちは心身ともに限界だ。歩き回るのもつかれたし、妃奈とのペアにも疲れた。

 親切心を出してあれこれしてやろうとか思ったこともあったが、もうだめだ。いちいち嫌味が尽きないし、俺の心はボロボロだった。


「どうしてそんな泣きそうな顔してるんですか?」

「お、ま、え、が! あれこれ文句ばっかり言ってくるからだろ! これでも頑張ってるんだぞ!」

「はぁ、そんなことですか。湊君を少しは見習ってください。少しもつかれてないですよ」

「誰にも文句言われてないからな⁉」


 莉弧と湊の後ろ、少し距離を開けて俺たちは歩く。極力あの2人の距離を近づけてやろうって配慮のはずだが、おかげで言いたい放題言われてる。莉弧たちが近くにいるときは牙をむいてこないから、間違いなく俺だけを狙い撃ちにしている。

 俺なら何言ってもいいと思ってるんだろうか。ストレスのはけ口にされてる気がする。


「あっ! じゃさじゃさ、最後にあれ! 乗ろーよ!」


 なんて言って莉弧が指さしたのは、観覧車。ジェットコースターに続いて、この遊園地で2番目に大きなアトラクションだ。確かに目玉っぽいのに、今まで乗ってなかったな。

 あそこならしばらく座って休めるだろうし、悪くないな。


 湊と妃奈も反対することはなく、俺たちは列に並んだ。日が暮れ始めて、そろそろ人が減ってきている。待ち時間はそう長くなさそうだった。


 と、そこでスマホが震える。


「ん? 莉弧?」


 見慣れた名前に顔を上げる。莉弧はすぐ目の前にいるはずだ。なんでわざわざロインを……。

 見てみると、莉弧は湊に見えないよう、隠れてスマホを触っているらしい。まあ確かに一緒に待っているときにスマホを触ってるのは印象良くないだろうけど。


『私の覚悟、聞いててね!』


 覚悟を、聞く? どういう意味だろうか。言いたいことがある? 何かを聞いてほしいのだろうか。だとして、やっぱりなんでロインなんだ。分からないことばっかりなところに追い打ちするように、莉弧が通話をかけてくる。

 ますますわからん。でも、とりあえず電話に出る。莉弧を見ると、スマホをポケットにしまったところだった。そして、後ろ手でブイサインを作ってる。


 そこまでされて、ようやく察した。

 莉弧のやつ、観覧車の中で告白する気だ。


 ベタと言えばベタなシチュエーション。確かに莉弧が考えそうなことだ。でも、王道には王道たるゆえんがある。だから、分の悪い挑戦ってわけじゃない。


 その挑戦を、見届けてほしいってことらしい。


 莉弧は、戦場に臨む戦士のような足取りで、観覧車の中へと入っていった。

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