第6話 一般通過オタク、同族に見つかる。
「なんか昔の私を見てるみたいだなって思ったんです」
「そんなに子どもっぽいか?」
妃奈が自語りを始めた。
「というのもですね、私も昔はそんな感じでしたから。誰にもなじめず一人ぼっち。いつも話題にはついていけず、友達も少なかった。……だからその頃の私を想像して、生徒会に用事なんてあるわけないし、こういう場では話しかけてあげないと可哀そうって思ったんです。……でも、必要なかったみたいですね。乙崎さんは面白い人みたいですし」
つまり、妃奈は同族を見つけたみたいな気持ちになって心配してくれたわけか。にしても過去の自分に根暗で現実見れないコミュ障は言いすぎだと思う。
「ちなみに、どうして生徒会に?」
「無理やりにでも変える必要があると思いまして。実際、変わってみて面白いんです。みんなと一緒に何かを頑張る、って。高校のはまだ入ってひと月程度ですけど、頑張れそうですし」
「じゃあ、中学校の頃から生徒会を?」
「そうです。会長ではなかったんですけど、書記として」
「なるほどな」
変わろうとして変わった、か。なかなか凄いことだ。普通の人はとっさにそんなことできないと思う。
何か言うことがあるとすれば、俺はなじめなくて1人なわけじゃないし、友達が少ないわけでもない。
なじむ以前の問題で、友達は1人もいないからな。
「ですから、乙崎君の向上心は素晴らしいと思っています!」
向上心? 何を言っているんだ?
「生徒会に入らないまでも手伝いを選び、人と関わる機会を設ける。きっとものすごい勇気が必要だったと思います。同じことをしようとした同志として、応援してますよ!」
え? あ、あー? つまり、妃奈の中では俺が自ら進んで生徒会を選んだことになってるのか。妃奈と同じように変わる必要があると感じて行動に移した、と。全く持ってそんな崇高な意思はない。意思はない、のだが――
「私でよければいつでも相談に乗りますからね!」
この子、すっげぇ目輝かせてるんだよなぁ。
なんかもうまぶしいくらいキラキラしてる。熱意を伝えてくる目。純粋な優しさだけが詰まってる。なんかね、今更違いますなんて言えないよ、俺。こんな真っ直ぐな目向けられたことないもん。
第一印象だと静かでおとなしい感じだったから、なんかギャップで疲れる。人を外見で判断しちゃいけないってのは本当だったらしい。
「よし! いい点とったよー! 次、どっちが歌うー?」
気づけば稲生会長、湊、莉弧の3人が歌い終わっていた。必然的に、俺か妃奈の番だ。
「じゃあ私が」
小さく挙手して、妃奈がマイクを受け取る。
こいつ、さりげなく最後を押し付けてきたぞ。と思っていると、妃奈が振り返って拳を握って見せてきた。いったいどうしたのだろう。
……って。
「ひなっち、これ何の曲?」
「俺も知らないな」
「アニメソングですよ。多分、みんな知らないかなとは思いますけど。乗りやすい曲なので」
妃奈……お前勇者だったのか。
俺がアニソンを歌うのはあまりにもハードルが高い。だからせめて、みんなとある程度仲のいいお前が身を貼って俺のハードルを下げようと……。これは感謝の言葉の限りを尽くす
ことは出来なかった。
妃奈が歌ったのは確かに乗りやすいタイプの、しゃれたポップミュージック。俺も知る有名アニメの歌で、ほかの3人もワイワイと合いの手を入れていた。が、問題はそこじゃない。俺だって似たような曲位いくらでも知ってる。
「お、おのれ妃奈……!」
こいつ、歌がバカうまい。ほかの3人と比べても圧倒的な歌唱力。まるで声優が出てきてそのまま歌ってきているかのような。
多分こいつは味方の顔した敵だ。俺が歌うであろうものと同ジャンルで実力差を見せつけてくる。普通にハードルが上がりまくってやがる。




