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第57話 アトラクション

「つ、疲れました……」


 ジェットコースターを降りて、妃奈は肩で息をしていた。これ、そこまで怖いジェットコースターじゃなかったと思うんだけど。


「楽しかったー!」

「だな! もう一回乗りたいな!」

「ひぇっ」


 満面の笑みで語り合う2人の言葉に、妃奈が小さく悲鳴を上げる。大丈夫だ、もう1度乗るときは何とか話を逸らして乗らなくていいようにしてやるから。正直俺も、お前のガチ悲鳴を聞きながらだとあんまり楽しくなかったし。

 

 っておい、俺の腕にしがみつくな。しがみついていることに気づいて慌てて距離を取り、俺を睨むのもやめろ。俺が何か悪いことをしたみたいだろ。お、おいやめろって。つねるのもやめろ。つねるのハマってるのか? 普通に痛いからやめてくれ。


「で? 次どこ行く?」

「んー、コーヒーカップ? って、乗ったことないかもー」

「乗ってみっか!」


 ……嫌な予感がする。誰が、何をとはあえて言わないけど酷いことになるんじゃないだろうか。せめて2人乗りでありますように――


「お、ちょうど4人乗りじゃーん!」

「ラッキーだな!」

 

 駄目だった。絶対高速回転で動くことになるんだろうなぁ。ジェットコースターはいけるけど横回転はなぁ……酔わないで耐えれるかなぁ。


 ジェットコースターほど人気ではないらしい。次の番で乗れそうだ。乗りたくはないけど。


「まあ、これなら……」


 と隣で何か言ってる馬鹿がいるが、あとで痛い目見ると思う。


 そして俺たちの番が来て……案の定、莉弧がハンドルをすごい勢いで回し始めた。


「うっひょー!」

「めっちゃはやー!」


 とはしゃぐ2人の傍らで


「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁ……」


 2人が目の前にいて、悲鳴を上げるのをためらっているのか、小声で叫ぶ人もいた。あまりに早すぎてかこらえ切れておらず、漏れ出ているのだけれど。

 せめて横の吹き飛ばされないようにと俺の服の袖をつかんでいる。2人の前出しバレにくくしてるんだろうけど、そもそも吹き飛ばされたりはしないから安心しろ。なんて言っても、聞く余裕はなさそうだけど。


「次はフリーフォールに!」

「いーねー!」


 降りた瞬間に絶望を与えてあげないでください。俺の隣で泣きそうになってるやつがいます。


「あー……俺、ちょっと疲れちゃっから飲み物でも買ってこようかなー」

「そーおー? んー、妃奈っちはどーする?」

「わ、私も買ってくることにします。あ、2人は乗っていていいですよ」

「そうか? じゃあ、妃奈、行くか?」

「うん! 行こ行こ!」


 意気揚々と去っていく2人の背を見届けていると、妃奈が大きく息を吐いた。


「はああああぁぁぁぁ……」

「そこまで苦手なら、どうしてついてきたんだよ」

「付いてきたくて来たんじゃないですよ。仕方なく来ただけです」

「いやまあ、そうなのかもしれないけど。無理に乗らなくたっていいんだぞ」

「む、無理はしてませんよ。あれくらい余裕です」

「嘘つけ……」


 もう助けてやらんぞ。


「……そ、そんなことより! 上手くいきましたね。2人きりにさせることが出来ました。私たちの計画は順調ということです」

「無理やりだな……。まあそうだな、上手くいってる。この調子で、いい感じに2人きりにしてやればいいんだよな」

「はい、そういうことです。とっても、順調です」


 言い終わると同時、妃奈は重たい息を吐く。


 本当に、無理なんてしなければいいのに。

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