第51話 お茶会の約束
「あーそーいえば、妃奈っちとのれっちにも相談したんだけど」
「ああ……は? 妃奈に相談した?」
相変わらずこのコンビニは暇らしい。ちらほらとくる数人の客を対応しつつだった莉弧が、突然爆弾を投げつけてきた。
「うん。え、駄目だった?」
「駄目、と言うか……」
すっごい面倒なことになりそう。
ただでさえこじれてんのに直接とか……いやまあ、莉弧は分かってないだろうし、非は全くないんだが。
どうしたもんかと頭をかく。正直今更どうしようもない。やっぱり嘘だったって説明しても無駄だと思うし、そもそも嘘ではない。俺から言い訳する道理もないし、何よりそれが必ずしも問題になるわけじゃない。
「……まあいっか。それでなんで?」
「あー、いや、無理だって言われちゃって。忙しいし、私にはそういうの向かないです、って」
「そうか。なるほどな。及川さんは?」
「私にできることなら、って言ってくれたよ。あ、そうだ。明日一緒にお茶する約束してるから、よるっちも一緒に来る?」
「そうだな……」
正直行きたい。妃奈のこともそうだし、莉弧の告白の件だって理由だけど、何より及川さんとお茶出来る機会なんてそうそうないだろう。……って、何言ってんだ俺は。どう考えても今重要なのはそこじゃない。
で、でもどっちにしろ参加したほうがいいのは間違いない。今関係が崩れそうなのをどうにかして修復しなきゃいけないのだ。そのためにも情報は集めておきたい。莉弧の手綱も握れるなら握って、悪い方向に行かないようにしなければいけない。まあ、無理そうだけど。
「行っていいなら」
「もちろん! じゃ、場所と時間はあとで送るね!」
そういえば、フッ軽なんて言葉があるんだったか。フットワークが軽いことを指すようだけど、俺はだいぶ軽いほうなのかもしれない。
そして翌日のお茶会。なんでも先月できたばかりのカフェらしく、どんなもんかと身構えて行ったのだが、想像以上のものが待っていた。
「あ、乙崎君」
「え」
俺がカフェに入ろうとしたときに聞こえた声は、ひどく落ち着き、冷静だった。でも別に冷たいわけではない。平らなだけで、どちらかと言えば丁寧な印象を受ける。
そして何より、俺を乙崎君と呼ぶ人は1人しかいないので、誰なのかはすぐに分かった。
恐る恐る振り返り、そこに立っていたのは。
「聞いてませんでした、あなたも呼ばれていたんですね」
「お、おう……」
すまし顔で立っている、私服姿の妃奈だった。




