第5話 一般通過オタク、カラオケに行く。
湊たちの後ろを付いていくと、やがてカラオケに到着した。計10人。一部屋に入ることもできたが、5人5人で別れることになった。
結果。
「俺は生徒会長の稲生海斗、よろしくな」
「改めて早迫湊だ」
「ウチは冨田莉狐! よろー!」
「宇都羅道妃奈、です」
「……乙崎夜瑠です。お願いします」
見事に外れを引いた。いやまあ分かってる。歓迎会と言いつつ、俺や及川さんと交流を深めるための行事。俺たちが片方に偏ったんじゃ意味がないもんな。にしたってどうして生徒会長と1年生全員なんだ? 不満はないけど、2年と1年は入り混じったほうがよくないか?
「早速なんだが、乙崎はなんで部活も委員会もやってないんだ? もちろん言いたくないなら言わなくてもいいが」
「特に理由はないですけよ。ただ、やらなくていいならやらないでいいかなって」
あれ、今俺同じこと繰り返して言ったか?
「はははっ、間違いない。けど結局ここの手伝いやるんだし、あえて委員会にしなかった理由はあるんじゃないか?」
「……あー、まあ、そうですね」
あいまいに笑ってごまかす。
初っ端から言えるわけない。友達いなくてそのこと知らなかったです、なんて。
「そうかそうか。まあ今日は好きにやってくれ。トップバッターは誰にする?」
「そんなん会長に決まってるじゃないっすか」
「そーそー! カイチョーがんばー!」
「ん? そうか? じゃあそうすっかなぁ!」
稲生会長はおだてられて喜ぶタイプらしい。上機嫌にマイクを握り、曲を選び始めた。今後不都合があったらおだてよう。
しかしカラオケか。人前で歌えるような持ち曲あったかな。アニソンとボカロしか知らないんだけど。
そんなことを考えているうちに会長が歌い始め、湊と莉弧が合いの手を打ち始めた。こうなると俺は蚊帳の外だ。この手のノリは全くわからん。
「乙崎君はカラオケ苦手ですか」
歌声を縫うように、小声で聞かれた。生徒会室に入るときにあったおとなしそうな子、妃奈だ。こちらを見るでもなく、ドリンク片手にうつむいていた。
「え? あー、苦手っていうか、始めてきましたし」
「初めて? ……え、1人でも来たことないんですか」
「家族でもとかじゃないんかい」
まったく失礼な奴――おい待て、俺今口に出したか?
慌てて隣を見る。妃奈が驚いたように目を見開いてこちらを見ていた。
冷汗ってやつだろうか。変な汗が額を伝った。
やっべー、やらかした。思わず素で突っ込みが出た。絶対初対面の人にすることじゃないってこれ。え、どうしよう。もう帰ったほうがいい感じかな。気まずさ急上昇中なんだけど。ジェット気マズサーなんだけど。ジェット気マズサーってなんだよ。あとジェットコースターは急上昇しねぇよ。とかどうでもよくて。
「あ、えっと、その」
「ちょ、ちょい待ち今のは言葉の綾というか思わず出ちゃったというか特に深い意味はなくて気にしないでほしいというか忘れてほしいというか……!」
ここまで一息である。
「……ふふっ、面白い人なんですね。なんか勘違いしてたかもしれません」
口元に手を当て、くすっと笑った。歌声にかき消されそうな小声なのに、はっきりと聞こえた笑い声。なんか勘違いって、俺もかもしれないと思った。もっとおとなしくて物静かだと思ってた。
それに、引かれたりはしてないみたいだ。一応一安心、だろうか。
「ちなみにどんな風に勘違いしてたんだ?」
「根暗で現実見れないコミュ障タイプかと」
「酷いなおい」
何も安心できなかった。




