第48話 風呂上り
妃奈が足早に帰り、俺と莉弧、湊も少しの気まずさを覚えながら解散した。
その光景が頭をめぐり続け、夜ご飯、入浴を終えても正直ほかのことは考えられないでいた。
「夜瑠、どったの? ぼーっとして」
「んー?」
そんな様子を見抜かれたのか、ドライヤーをかけながら朝紗が聞いてくる。その音をかき消すため、ちょっと声を張ってみる。
「ちょっとなー」
「ちょっとって何?」
「朝紗には関係ねぇよ」
実際、俺の人間関係についての話だ。朝紗に何か言っても仕方ないだろう。
なんて思っていると、ドライヤーの音が止まった。
「どうせくだらないことだけど、私が悩みを聞いてあげるよ。ほら、ありがたく話してみて」
「なんで上からなんだよ……ほら、いいから寝てろ。明日からゴールデンウィークの後半だ。まだまだ遊び盛りだろ」
「な、撫でないでよ! それに遊ぶ予定はないよ! 勉強するんだから!」
「おお、そうかそうか、それはいいことだ。俺みたいにはなるなよー」
おっと朝紗、さすがにドライヤーで殴ろうとするのはやめてくれ。普通に痛いから。ごめんって、せっかく整えた髪乱して。
「……で、結局なんなの」
「で、なんで結局言わされそうになってんだ」
「髪乱したから」
「それだけで……?」
なんとも納得しがたい。が、まあいいか。このままだと面倒くさいし。
「じゃあ、俺の友達の話なんだけど」
「その恋相談みたいな始まり方止めない?」
「仕方ないだろ、実際に友達の話なんだから」
「友達なんていないでしょ」
「できたんだって言ってるだろ」
いやまあ、妃奈を今友達と言っていいのか分からないけど。
「そいつがな、俺のことを無視するんだよ」
「……それ、一方的に友達だと思ってるだけじゃ」
「んなことねえよ! 一緒に遊びに行ったし見舞いにだって来てくれた」
「ああ、この前のお菓子の人? ならおかしいか、わざわざ来るんだもんね」
「そうそう。だから原因が分からなくてな」
「嫌われるようなこと言ったんじゃないの?」
「それなー。自覚はないんだけど」
まあ、決定的な一言があったのは間違いないんだけど。あれだけで嫌われるいわれはないと思うんだけど。
「夜瑠どうせデリカシーこと言ったんでしょ? 服似合ってるねとか」
「……それ、デリカシーないのか」
「そりゃそうでしょ、セクハラだよそれ」
「えー……」
今の時代ってそれでセクハラなのか? 酷い時代になったもんだな。それともむしろモラルが強化されたとみるべきなのだろうか。
「まあそれか……好きなのを隠そうとしてる、とか?」
「……それは、無くないか? 俺だぞ?」
「いや別に、好きな人がいてもおかしくはないと思う、けど」
「んな馬鹿な。この顔なうえオタクな陰キャだぞ。モテる要素なんてありゃしない」
「人の魅力ってそれだけじゃないし……ほら、あれだよ。にぃ……夜瑠は、いい人だし!」
「フォロー、ありがとな」
朝紗のやさしさが少しだけ心にしみた。




