第47話 合流
用事を終え職員室から出ると、今まさに扉を開けようとしたのか妃奈がいた。ノックしようと作った拳を掲げたまま、唖然とした表情でこちらを見上げている。
「あ、あれ?」
「先生への報告ならしておいたぞ。あとで確認してくれると。任せて帰っていいってさ」
「えっ、あ、そ、そうですか。その、すみません」
「気にするな。妃奈が中庭で待ってるはずなんだ。行こうぜ」
「は、はい」
あまりに困惑しているのか、妃奈は思いのほか従順だった。てっきり、自分でも報告してきますとでも言うのかと。
固く閉ざされたままの拳をゆっくりとおろして、妃奈は振り返る。先を行く妃奈は、俺に見えないように手を前にもっていって、逆の手で握っているようだった。
中庭に行くと、妃奈はまだいるようだった。あたりはすでに橙色。少し長居をさせてしまった。
「あ! 帰ってきたー! よかったぁ、見つかったんだね」
「すみません、ご迷惑おかけして。その、ちょっと問題がありまして」
「んーん、何事もなくてよかったよ。湊にも連絡するね」
椅子から立ち上がった莉弧は、自然な動作でスマホを取り出す。
「なんだ、湊も探してたのか?」
「うん。心配だからって。あ、既読着いた。すぐ戻ってくるって」
「はやっ」
陽キャの着信音への反応速度はやはり異次元らしい。それか、心配すぎてずっと開いていたかだな。
にしても、そこまで心配してもらえるとは。俺なら絶対そうはいかない。羨ましいなと思って妃奈を見る。
けれど妃奈は俯き、手をせわしなく動かしていた。
それからほどなくして湊が帰ってきた。小走りで、息を切らしているようだ。あの運動神経がいい湊が就かれているのを見ると、相当必死になって探したんじゃないだろうか。
「よ、よかった……怪我とかはなかったんだよな? 体調が悪かったりとかは?」
「無いです。……心配をおかけしてすみません」
湊はすぐに妃奈の目の前に駆け寄った。自分の域を落ち着けるのも忘れて声をかける湊に、妃奈は頭を下げた。
湊はそれに笑って返す。
「何言ってんだ。無事ならそれでよかった。はあ、ビビった。急にいなくなるんだからな。……何してたんだ?」
いったん息を整えて、湊が聞いた。
「じょおろを探していて。用意したほうがいいかと思いまして。それでその……いろいろあって、倉庫に閉じ込められてしまって」
「閉じ込められたって、本当に大丈夫なのか? 何かぶつかってとかは?」
「な、無いですって。本当に何ともありません」
湊が伸ばした手を避けるように、妃奈は身をかわす。
それに目を見開いた港を見て、妃奈はハッとしたように肩を揺らし、目を逸らす。
「そ、その……すみません。本当にご迷惑をおかけしました。私、予定があるので帰りますね。お疲れ様です」
「あ、ああ。お疲れ」
足早に去っていく妃奈の背中を、俺たちは見つめることしかできなかった。




