第44話 草むしり
放課後、生徒会の集まりでやってきたのは中庭。花壇の手入れという仕事だそうだ。
「これ、生徒会の仕事じゃない気がする……」
「そういうなって。これをすることで学校全体の美化に繋がるんだから」
軍手をはめ、汗をかきながら草むしりをする俺に、湊が言ってくる。
「よるっち頑張れー! ウチらもこっち頑張るから!」
「頑張ってください」
莉弧と及川さんが応援してくれる。その2人が何をしているのかと言えば、日陰で資料を眺めている。というのも去年までの記録を見て、今年植える花を決めるらしい。そんなことはあとでいいから手伝ってほしいのが半分、あの2人にこんな作業は似合わないと思うのが半分。
まあ、そこまで量が多いわけではないし、他の2,3年生も頑張ってくれているので我慢する。
それはそれとして――
「では、このごみ袋を捨ててきますね」
「ああ、宇津羅道、頼んだぞ」
妃奈に、特段変わった様子はない。落ち着いていて、まじめで、物静か。感情を高ぶらせている様子はないし、不機嫌でもない。
でも、俺に喋りかけてくれてはいない。
まだ出会って数日。仲がいいわけでもないから、挨拶がなくたって不思議はない。この人数ではあるし。でも、初めてあった日の妃奈なら、優しく話しかけてくれていたはずだ。そうしてくれないだけの理由があるってことだと思う。
直接切り出しても話してはもらえない。そもそも話しかけたとして無視されるかもしれない。今だって、半ば無視されているし。
「ちょっと乙崎、何をぼーっとしているの? 手を動かしてもらえないかしら」
「ああ、日南副会長。すみません、ちょっと休憩してて」
この人、ちょっと苦手なんだよなぁ。口調強いし、ちょっと怖い。あの体格の会長に物怖じしてないし、何かしでかしたら手を出されそう。この時代にないとは信じたいけど、竹刀とか似合いそうだし。
「……お前、宇津羅道のことばっかり気にしてるわよね。好きなの?」
「きゅ、急に何を言い出すんですか。違いますよ。むしろ、俺が嫌われてる気がしてるくらいで」
「そうなの? まあ宇津羅道はあんたみたいなの嫌いでしょうしね」
「……え? そうなんですか?」
思いもしなかった言葉に目を見開いてしまう。だってあいつ、同族がどうとかって。
「私中学校同じだったけどあの子なんでもする努力家だからねぇ。あんたみたいになんでも妥協しそうなパッとしない男は嫌いだと思うわよ」
「……え? 悪口言われてます?」
「違うの?」
「違わないですけど。あの、俺みたいのが何言われても平気とか思ってません? 普通に泣きますよ?」
というか涙腺に来た。普通に目頭が熱い。いや、感動してるとかじゃなくて。
「誰よりも努力かな子だもの。頑張らない人は嫌いだし、その上成果を上げるとか、頑張ってるのを演じるのも嫌いだったと思うわよ。まあ、直接話を聞いたわけじゃないけど」
……酷く傷つけられたが、得たものもあった。妃奈がおそらく、もともと俺のことが嫌いだったということ。じゃあなんで、最初、俺に話しかけてきたんだろう。それどころか、優しくするようなそぶりを見せてくれたんだろう。




