第43話 朝SHR前に
翌日、調子もよくなったことで登校した俺の前に、莉弧がいた。
朝のSHR前、俺の机の前でずっと待っていたのだろうか。教室の扉を開くと同時にこっちを見て、駆け寄ってきた。
「よるっち! おはー!」
「おぉ……おはよう」
「大丈夫? 元気になった?」
「まあな、もう平気だ」
会って早々病気の心配。机に荷物を置くまでついてきて、俺の体をくまなく見まわす。
「そかそか、元気ならよかった。ほらさー、多分うちのせいじゃん? 重症だったらどーしよって」
「別に莉弧のせいじゃないだろ。俺が馬鹿だっただけだし」
「でもさ、嬉しかったから。ありがと」
「……どういたしまして」
こう面と向かってお礼を言われるのは慣れないな。それも、社交辞令じゃないって分かるのが直に響く。
照れてるってばれたくなくて、目を背けながら席に着く。
「あ、そういえば誕生日だったらしいな。おめでとう」
「えーっ⁉ 誰から教えてもらったの⁉ ありがと! え、めっちゃ嬉しい!」
「いやいや、プレゼントも用意できなかったし」
大袈裟に喜んで見せる莉弧に言うと、首を横に振ってきた。
「だってよるっち、誰かの誕生日とか気にしなさそうじゃん。そんなよるっちが祝ってくれるんだもん」
「……まあ、気にしにないな」
「でしょー?」
莉弧は机の前で屈む。頬杖をついて、俺に笑顔を見せつけてくる。
……マジで、勘違いするからやめてくれ。お前の本命は湊だろうが。俺にもいい顔するの、やめてくれ。心臓に悪い。
「あーそーそー。2人とは仲直りできたよ、おかげで」
「それは良かった。まあ、心配はしてなかったけどな」
「えへへー。よるっちの言う通りだったよ。ウチらしくしてたら、なんか上手くいった」
まあ、そうだよな。莉弧はもともと周りにも幸せを呼ぶような性格の持ち主だ。これだけいつでも笑ってて、その笑顔が気持ちよくて。こんな人なりならどうにでもなるとは思ってた。
あとはまあ、原因も分かってたし。
……そういえば、妃奈はどうしただろう。
「妃奈って来てたか?」
「ん? ひなっちなら来てたけど。どうしたの?」
「いや、ちょっと気になることを言われてな。放課後は生徒会の集まり、あるんだっけか」
「あるよー。さりげなく聞いてみよーか?」
「うーん……」
どうしたものか。
なんていうか、去り際に言葉にはとげがあった。もちろん本音は話してくれなかったけど、俺ならたぶん、平静を装ってた。あんな風に言わないで、もっと必死にごまかした。とげが立たないように。
……話してくれる気が、あるってことだろうか。どこか莉弧と喋ってるときの俺っぽさを感じたんだよな。
「いや、自分で聞いてみる。なんか、そのほうがいい気がする」
言うと、莉弧は目を見開いた。でも、やがて柔らかく口元を緩めて言った。
「うん、そのほーがいーと思う!」




