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第40話 熱が出た

「もー、に……夜瑠。朝から看病なんてさせないでよ」


 まったく、と嘆息しながら朝紗が熱冷ましと飲み物のペットボトルを持ってきた。


「別に、したくなければ母さんに任せていいんだぞ?」

「い、いや。お母さんに任せるのも可哀そうでしょ? 不出来な兄の尻拭いをちゃんとしないと」

「身内ってことではなんも変わらないんだけどな……」


 面倒見がいいのはいいことだが、どうせなら友達と遊ぶとかすればいいだろうに。いや、俺が言えた話ではないんだろうけど。


「てか、急にどうしたの熱なんて。昨日まで元気に新しい友達と遊んでたじゃん」

「その、小学校に入ったばっかりの文言なんかやだな」

「まあ確かに高校生にかける言葉ではないよね……ごめん」

「謝るなよ。こっちが虚しくなるだろ」


 俺が選んだ道とはいえ社会不適合な自覚はあるのだ。あまり現実を突きつけないでほしい。


「それで? 心当たりはないの?」

「あるぞ」

「あるんだ……あれかな。普段人と接することがないから、突然人と接して抗体がない感染症にかかった、とか」

「ごめん、俺一応学校行ってるんだ」

「あれ、そうだっけ?」

「そうでなけりゃ誰かと遊んだりしない。それ以外で人と関わらないからな」

「……うん、なんかごめん」

「だから謝るな」


 なんてくだらないことを言えるくらいには元気である。

 何気に目指していた皆勤賞への道が絶たれてしまったが、まあいい。今日くらいはゆっくり休ませてもら――


 机の上で何かが震えている音が聞こえる。今の音は、あんまり聞きなれていないロインの着信音。俺のロインには朝紗のほかに、あとは生徒会1年生組しか登録していない。

 ……なんか、少し嫌な予感がしてきた。


「あれ、夜瑠のスマホからなるはずがない音がしてる」

「言ってないで取ってくれ」

「具合悪い人がスマホなんて触っちゃだめだよ」

「いいから。お前もそろそろ学校だろ」

「ひっどーい。せっかく面倒見てあげてるのに」

「ほら、熱冷まし張った。飲み物も受け取った。あとはスマホだけくれ」

「……はい」

「ありがとな朝紗。助かった。お前は風邪なんて引くんじゃないぞ!」

「ちょ、押さないで! い、行くから! お大事にね! ちゃんと寝てるんだよ!」

「わかったわかった! ……ふぅ」


 無理やり起こした体を、ゆっくりと倒す。そうは言っても気怠いらしい。今のでちょっとふらっと来た。


 さて、いったい誰から来たのだろうか。

 スマホを開いて、確認。どうやら莉弧からのようだった。


『よるっちどったー? 休みー?』

「朝一で教室来たのか……」


 時刻を見るとすでにSHRの時間。直前まで教室で張り込んでたのか。なんか悪いことした気分になるが、勝手に待ってた莉弧も莉弧なので気にしないでおこう。


『ちょっと体調不良で休み。どうかしたのか?』

『えっとねー、きょー湊たちと話そうと思ったから、作戦会議てきな?』

『なるほどな。でも、俺じゃ力になれんぞ』

『まー具合悪いなら仕方ないねー。お大事にー』

『ありがとな』


 ……おい待て、こいつSHR中にスマホいじってんのかよ。それでいいのか生徒会。

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