第38話 秘密話
「……」
「……」
「……」
雨は、まだ続きそうだった。
なんか、ぼーっとしてたら少しずつ眠くなってきた。眠気にやられたのか、瞼が重たい。
「ねえ、よるっち」
「……ん?」
「ウチの話さ、聞ーてくんない?」
「まあ、いいけど」
「やった」
何がやったのだろうか。別に嬉しいことでもないだろうに。
「あのさ、ウチがバイトしてるの、知ってるのよるっちだけなんだよね」
「そうなのか?」
「うん。湊にもひなっちにも言ってない」
「なんでまた」
ウチバイトしてるんだー、って、普通に話していそうなものなのに。
「実はねー、ウチ大学の学費稼いでるんだー」
「学費? すごいな、まだ俺たち1年だぞ」
というのは建前で、遊ぶためのお金じゃなかったんだ、って出かけた。
「えへへー……実はね、ウチめっちゃきょーだいおーくて、しかも片親なの」
「……大変、なんだな」
「まーねー。でも、みんないーこだし、おとーさんも優しいから」
父親か。多いって、具体的には何人なんだろう。
いろいろ気になることはあるけど、それ以上にまったく想像ができない。そんな大変な家族の生まれの子が、どうしてこんなに明るい顔ができるんだろう。俺なんて、お金の心配もしたことないのに、こんな暗い性格してるのに。
いや、だからこそ家柄とかは関係ないのか。
「でさ、ウチちゃんと大学行って、いー会社行きたいんだ。で、皆のためにたくさんお金を稼ぎたい」
「それを何で隠してたんだ?」
「んー……心配させたくなかったの。ウチ、勉強あんま出来ないし、それなのに大学とか、バイトとか言ってたら、生徒会の仕事とかさせてくれないかもしんないから」
「莉弧は、生徒会にいたいのか?」
それだけ大変なら、無理に頑張らなくてもいいと思う。莉弧じゃないといけないわけじゃないだろうし。それこそ、俺が変わりに頑張っても、まあ。事情が事情だし、仕方ない。
でも、どうやらそういうわけにもいかないらしい。莉弧は、すごい楽しげに言う。
「うん。だって、湊と一緒にいられるもん。ちゅーがっこーの時さ、湊とひなっちが生徒会で、ウチだけ違ったの。ちゅーがっこーのときは選挙でさ、ウチ、選んでもらえなかった。真面目な感じじゃないし、ほら、勉強できないし。だから、こーこーに入って、湊と一緒に生徒会出来て、めっちゃうれしーの」
3人の中学校が一緒だったのも何気に初めて聞いた。が、今はそれどころじゃないのだろう。
莉弧が今本気で嬉しそうなのは、多分、全部を手に入れたから。そんな自分を改めて自覚したから。
高校生になって、バイト出来るようになって、大学までの道筋も立って、生徒会にも入れて。莉弧は欲しいものをたくさん持ってる。
あとは、湊だけだったわけだ。それを、諦めなきゃいけなくなったわけだ。
「ねえよるっち」
「ん?」
「なんでウチが湊を好きなのか、聞きたい?」
「……聞きたくない」
「えー? しよーよー、恋バナ」
「しない」
「よるっちが好きなの子の話もしていーからさー」
「いや、それデメリットだから……」
「いーからいーから!」
……ほんと、早く雨終わらないかな。
せっかくなら、もっと明るいところでこの笑顔を見ていたい。




