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第35話 後味

 デートしてたのってことは、見てしまったのだろうか。見たんだろうな。

 帰るだなんて嘘言って、本当はしばらく見て回ってて、その最中で見かけてしまって。見かけただけなら、まだいいんだけど。悪い予感というか、なんというか。

 及川さんはと言えば、こちらを見て眉をひそめていた。


「その、乙崎さん」

「……こっちは莉弧からです。そっちはなんですって?」

「冨田さんと出会ってしまい、会話をしたと。その中で、誤解を生んでしまったらしいと」

「そうですか。……すみません、俺ちょっと、考えなしでした」

「いえ、それは私もでし。浮かれていて、考えが及んでいませんでした」


 楽しい時間が台無しだ。でもそれは俺のせいでもある。及川さんを傷つけてしまったかもしれない。でも莉弧は確実に傷ついた。でもあの3人は知った仲のはずだ。でも、だからこそひびが入った時には深く傷つくのかもしれない。

 分からない。友達が出来たのは、多分初めてだから。


「……すみません、俺、莉弧のところ行ってきます」

「お願いします。こちらも早迫さんたちに状況を伝えてきますね」

「はい」


 マジで最悪だ。どうしてこうしまりの悪い別れ方なんだ。デートっぽいなんて浮かれてたのがバカみたいじゃないか。何が綺麗な横顔だ。いや、及川さんの横顔には何の罪もないんだけど。

 ……頭の中がごっちゃだ。走ってるのもあって、体が熱いし。呼吸が乱れてて落ち着く暇なんてない。考えがまとまるはずもない。せめて目的地だけをはっきりとさせて、全力で走る。

 あーもう、体力付けておけばよかった。後悔ばっかだ。


 汗まみれになりながら向かったのはショッピングモールから少し離れたところにある公園。その、行け近くのベンチらしいのだが、正直どこか分からない。地図を見て池の場所は分かったけど、どこにベンチがあるかなんてわからないし、池の全方位に道がある。

 これ、最悪一周するぞ……。


 その時、ぽつぽつと足元に水が滴るのが見えた。どれだけ汗をかいたのだと思うのもつかの間、あたりが暗いことに気づいた。


「雨かよ!」


 とっさに周りを見渡す。俺以外には誰もいなかったらしい。よかった。いや、よくない。これ多分俺が気づいてなかっただけでそれなりに前から降り始めてたぞ。地面にはもう水溜まりができる。

 ということは、莉弧はとっくに雨に打たれてるってこと。


「……ああもう、なんで俺がこんなことしてるんだよ!」


 そんな義理ないだろ。助けてやったのも付き合ってるのも俺のほうだ。この前足の心配とかしてもらったかもしれないけど、それだって割に合わない。昨日はバイト手伝ったし、今日は相談を受けたし、買い物にも付き合った。

 そのうえで雨の中走らされてる? 意味が分からない。

 俺がしてもらったことってなんだよ。


 靴の履き方教えてもらって、足怪我した時心配されて、気まずくならないように積極的に話しかけてくれて、こんな俺相手にも楽しそうにしてくれて。

 ボディタッチ多めでドキドキさせられたのは……まあ、もらったことにしておこう。多分今後ない経験だろうし。

 ……だとすると、釣り合っていそうな――いや、釣り合ってなんてない! 諦めるな俺、釣り合っちゃことにしちゃ駄目だろ!

 駄目、なんだけど! 


「莉弧! どこだ!」

 

 ここで今更帰ったら、絶対家で頭抱える! そうなるくらいなら、あと少し走るくらい安いもんだろ!

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