第24話 コンビニ
「えぇっ⁉ マジでよるっちどうしているの⁉ 嘘ー⁉ えぇー⁉ なんでー⁉」
えっと……そんなに言われる? え? 来るだけで頭抱えるほど? 顔も見たくないって? この前仲いい風にしてくれてたのはほかの人がいたから? 一対一だと目の前でこんな反応しちゃうくらい嫌いなの? え? このまま海まで行ったほうがいい?
「うわー……あーもー! よるっち!」
「あ、はい」
「黙っててくれる?」
「な、なにを?」
急に距離を詰められて、思わず動揺してしまう。というかマジで顔近い。まつ毛当たりそう。いやそこまでじゃないけどそんな錯覚しちゃうくらい近い。少なくとも荒くなった息遣いは聞こえる。
「私がバイトしてたこと! 内緒にしてたの!」
「え? まあ、いいですけど……」
「ほんと⁉ よかったー! ありがと! マジ助かる!」
「お、おぅ……」
両手を掴んで振ってくる。力が強いことと、肌の柔らかさに心臓が跳ねた。やめてほしい。気軽に触らないで、俺、耐性ないから。
なんで世の主人公どもは女の子の頭撫でるとかラッキースケベで体を触るとかして平気なんだよ。特殊な訓練受けてなきゃ無理だろ。心臓が持たない。てかあの、早く、放して……!
「あっ! 仕事しなきゃ! 引き留めてごめん! なんか買ってくんだよね? ちょっと待ってて、すぐ戻るから!」
ようやく話してくれたかと思えば、それだけ言って走り去ってしまった。ごみを捨てに行ったのだろう。にしてもほんと、あわただしい人だ。いつもいつも元気で羨ましいというか振り回されるというか。
大きく息を吸って、吐く。どうにか呼吸を整えてから、俺はコンビニの中へと入ることにした。
中は知っているコンビニより静かな気がした。早朝だとこういうものなのだろうか。人の気配がしない店の中を見て回る。水族館みたいだなと思ってしまったのはどうしてだろうか。
欠品がひとつもない棚を心の片隅で綺麗だと思う。ただただ静かな見学会を続けていると、おにぎりの棚を見つけた。軽食程度ならこれくらいがちょうどいいだろうか。
「うっ、やっぱりちょっと高いよな……」
普段自分でご飯にお金を払うことはないのだが、どうにもそんな感覚を抱いてしまう。いやまあ、安いほうだって言われたらそうなのかもしれないけど、200円を超えるおにぎりを見ると高いと思う。
そうは言っても背に腹は代えられない。せめて美味しそうなものをと思って探していると、肩を叩かれた。
思わず振り返ろうとして、頬に何か細いものが刺さった。首の動きを止められたので目を動かす。そして誰かの指が見えて、さらにその向こうにニコニコ笑顔な莉弧がいた。
「おにぎり買うの?」
「ああ、はい。そのつもりです」
というか、え? 指の件は触れない感じ? ちょっとだけ痛かったんだけど……。
「もー、そろそろ敬語止めない? ウチら同い年でしょ? ひめっちにはタメなんだし」
「……逆に、いいのか? いやいや、むしろなんで駄目なの? 駄目な理由なくない?」
「まあ、確かに……」
や、やばい。なんかすごい勢いで距離詰められてる気がする。いや、分かってるよ? これが莉弧とかの普通なんだろうけどさ。ほら、こっちはその場で足踏みしたあと疲れて休憩してそっからさらに引き返してみてそっから勇気を固めてようやく進みなおすからさ。
やべぇ、どう考えても俺がおかしいだけだ。




