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第23話 朝のお散歩

 翌日、俺は普段よりも2時間早く起きた。

 スマホのアラームを止める手はいつもより重たい。眠い目を擦り、ベッドから降りる。布団に戻りたい気持ちを抑えた。それから洗面所に向かって顔を洗った。相変わらずさえない顔が、若干の寝不足で酷いものになってる。あ、寝ぐせ。

 正直面倒くさいがなんか妙に気になってしまって直してみる。


「……まあ、さっきよりましか」


 よくよく考えれば寝癖が格好悪いのは分かっても、格好いい髪形なんて知らない。頑張るだけ無駄だった。

 蛇口を閉めると静寂が広がった。確認したがまだ母さんも起きていない。朝ごはんが用意されていない朝なんてほとんど記憶にない。それこそ、母さんが寝坊した時くらい。


 じゃあなんで俺がこんな時間に起きたのかと言えば、散歩に出かけるためだった。ちなみに今日は昭和の日らしい。思い至った日がちょうど休日でちょうどよかった。

 というのも、昨日俺は自分の運動不足を痛感した。いくらなんでもあれはどうだろうと思ってしまったわけだ。そこで散歩。ハードルが高いわけではないし、ちゃんと運動にもなる。及川さんと同じ趣味を持てば会話のきっかけになるかもしれない、なんて下心もあるにはある。


 けど散歩って普通どれくらいするのか分からない。少しだけ悩んだ結果アラームは普段よりも2時間前。さすがに過剰だと分かるほどの時間を作ってしまったわけだ。


 靴のつま先を床で叩いて整える。そういえばこの靴もぼろくなってきた。そろそろ新しいものを買ってもらおうか。

 なんて考えながら、俺は散歩に出発した。


 それから、1時間後。


「ここどこだよ……」


 俺は迷子になっていた。いや、多分帰れる。帰れるんだけど、すっごい遠回りになりそう。スマホで地図アプリを使ってみたら、徒歩での所要時間3時間。何やってんだこのアプリ、ポンコツめ。俺ここまで1時間できたんだぞ。


 俺は山の中にいた。いや、別に登山道とかじゃない。山の中の、公道を歩いてる。だからこの公道を通っていけば家には着けるのだが、すっごい遠回りなのだ。

 細い参道を見つけて好奇心を頼りに登ってみて、へえ、この道に出るんだぁと公道を歩くこと30分ほど。いくつの車が横を通ったのか数えるのも気が遠くなってきたころに、俺は気づいた。あれ、俺どの細道から公道に出たんだっけ、と。

 そして今に至る。


「えぇ……あの道って地図アプリで出ないのかよ。てかもしかして獣道ってやつか?」


 さてどうしたものか。帰れないわけではないが、帰ったころには朝飯はなくなっているだろう。てか、そろそろおなかすいてきた。のども乾いたし。


「確か、この辺にコンビニあったよな」


 なんて記憶をどうにか呼び覚まし、公道を歩き続けることさらに15分。

 記憶通りコンビニがあった。みんな大好き、コンビニエンスなストアは、迷子の俺にも味方してくれる。

 スマホがあるから交通系で支払いは出来るし、食べ物と飲み物だけ買わせてもらおう。あとは朝紗にでも連絡して、それから――


「え」

「ん?」


 コンビニの入り口前、スマホをいじりながら入ろうとしていると、ふいに声が聞こえた。

 何かと思って声のしたほうを見ると、コンビニの定員がいた。周囲の木が高く、日陰になっていて見えなかった。どうやらごみ捨ての最中らしい。外のごみ箱の前でかがんで、ごみの袋の封を閉じてる。

 その人が、どういうわけかこちらを凝視している。そんなに変な格好をしているだろうか。来ているのはスポーツウェア。中学生のころ、運動しなさいと買ってもらったものだ。大丈夫だと思ったけどきつかったか? それとも、俺みたいな運動音痴顔が着るにはキツかったか? え? 脱ぐ? 捕まる?


「よるっち、どうしてここに……」


 そんな声が、俺を現実に引き戻す。

 そして、俺をよるっちだなんて呼ぶのはこの世に1人だけ。まさかと思い、目を凝らす。日陰の下、暗がりで顔がよく分からない。普段と違う服装ということもあって、全く気が付かなかった。

 しかし、そこにいたのは間違いなく、莉弧だった。

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