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第22話 蚊帳の外から

 

「じゃ、また相談するから連絡先交換しようよ」


 そういってロインの登録だけし、莉弧はみんなのところへ帰っていった。

 右足が痛む俺は、4人そろって遊び始めたみんなを眺めるばかり。でも正直、こういう時間は嫌いじゃない。


「顔がいいと、何しても映えるよな」


 あの4人、及川さんは当然だが、みんな顔がいい。

 俺ならべたつくだけの汗が爽やかに見えるし、髪の乱れも演出になる。あと、笑顔が様になるのがいい。俺が笑ってもキモいだけだ。それがどうだ。美男美女が笑うとそれだけで絵になる。あそこに混ざっていた俺は、明らかに分不相応だっただろう。


 今まではこういう場面を眺めることすら難しかった。でも、今日は一応誘われた身。こうして見ていても不審者扱いされることはないし、大義名分はばっちりだ。


 蚊帳の外にいる寂しさよりも、観客になれてる喜びが勝つあたり、やっぱり俺は誰かと一緒に遊ぶのは得意じゃないんだろうな。


 足の具合がよくなってからも、俺は見ているだけを続けた。時々みんなが心配してくれるのは嬉しいことだったが、罪悪感もあった。


「乙崎君、無理しなくていいですからね。もしあれでしたら、早めに解散して病院にでも……」

「そこまでじゃないから大丈夫だ。それに俺が運動音痴なのがいけないだけだしな。邪魔しちゃ悪い」

「そんなことはありませんけど……まあ、そういうことでしたら。よくなったようでしたら、一緒にやりましょうね」


 妃奈はそれだけ言って、皆に合流。ゲームセンターにあったダンスゲームの順番待ちに向かった。

 ダンスなぁ、苦手なんだよな。中学の体育の授業もあれこれ言い訳してさぼったくらい。いやさ、ただでさえ目立ちたくないのにちょっとのミスでもすぐ分かるのは良くないと思う。

 下手でも楽しむのが大事だなんて先生は言ってたけど、先生、俺運動苦手なんです。楽しむ余裕なんてありません。


「ふぅ、踊った踊った! スコアも湊に勝ったし!」

「くっ、も、もう1回だ! 2人が終わったらもっかいやろうぜ!」

「もっちろん! 次も負けないからねー!」

「おう!」


 湊は汗をぬぐいながら拳を握り、飲み物でも買いに行くのだろうか、どこかへ歩いてしまった。

 そんな湊の相手を買って出た莉弧はと言えば、流れる汗を演出に、キラキラと輝いた姿でこちらに向かってくる。一番近いベンチだというのは分かっていても、こう、美人な人が向かってくるのを見ていると少しびくっとしてしまう。

 汗とシャンプーの混ざった香りとか、熱いからとはたく服の裾とか、その隙間から見える肌とか。なんか妙に色っぽくて、思わず視線をさ迷わせる。

 そういうの目に毒だからやめてほしい。いや、保養にもなるとは思うけど、俺みたいなピュアハートの持ち主には刺激が強いんです。


「よるっちどー? よくなんない?」

「い、いえ。だいぶましにはなったんですけど……無理するのは良くないかなって。自分、普段から運動しないですから」

「そっかー。まーそーだよね。苦手なこと、無理にしてもよくないよねー」


 ぐぐーっ、と、莉弧は大きく伸びをする。右手で左手を、左手で右手を。交互に伸びをして、大きく息を吐く。

 その瞬間に大きく揺れた緩い胸元を、思わず凝視した俺をだれか裁いてくれ。でも莉弧に気づかれるのは嫌なのでやっぱり裁かないでほしい。おかしいな、同じ女性の妹にこんな色気はないはずなのに。

 いやまあそもそも美人で陽キャな莉弧とがさつな朝紗を比べるのがそもそもお粗末というか失礼というか犯罪というか戦犯級のやらかしではあるのだが。


「次はさ、やっぱりよるっちの好きなことやろーよ。みんなで楽しめたほうがいーっしょ?」

「いやいや、自分の趣味とか、絶対合わないですし。俺オタクだから」

「ひなっちもおたくだよー?」

「多分、妃奈とは比べ物にならないくらいオタクですよ」


 そーなの? と莉弧は小首をかしげる。よく理解が出来なかったのか、すぐに話題が切り替わった。その気の利き具合といい、やっぱり陽キャというか、リア充というかはすごいというか。俺には到底できないというか。


 結局、俺が真の意味で、この人たちと仲良くなれる日は来ないんだろう。

 不意に揺らしが右足首が、ずきりと強く、傷んだ気がした。

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