第2話 一般通過オタク、たまに損をする。
「乙崎夜瑠っているか?」
昼休み、教室の中にそんな声が響いた。
前のほうの扉から見覚えのない男子生徒が顔を出している。見た感じ、同級生っぽい。読んでいるのは間違いなく俺の名前だが、もしかすると同姓同名がいるかもしないのでしばらく黙っておく。
……誰も反応しない。もし俺以外の名前だったら、あそこにいるよ、とか、今いないよー、みたいな反応があったのだろうか。あったんだろうなー、なんで俺ないんだろうなー。
ま、友達すらいないからなんだけど。
「はい、俺です」
とりあえず返事する。席を立って、名前を呼んできた人のところへ。
「あ、乙崎? よかった、いたんだな」
なんか、美形だ。多分サッカー部。
「俺は生徒会の早迫湊。実はちょっとした頼みがあってな」
おっと生徒会だったか。まあどうせ中学校の頃はサッカー部だ。
「委員会も部活も入ってない人が、この学年に3人いる。そのうちの1人が君だ」
ほう、つまり俺は選ばれしものということか。
「そういうわけだから、君には今日から生徒会の手伝いをしてもらう」
……ん?
「ちょ、ちょっと待ってください。……生徒会?」
「ああ、そうだ。あれ、そういう説明されてないか? 各クラスから数人、委員会に入らなくていい人がいる。そのうち部活動にも入っていない人は生徒会の手伝いをしてもらうことになる、って」
「え、知らないんですけど」
いつだ? 委員会を決める日? それとも始業式? どこかのプリントとか張り紙に書いてあったか?
「おっかしいな。今年からの生徒会の方針で、各クラス共有してもらってたはずなんだけど」
「……口頭でですか?」
「いや、ロインで」
じゃあ知るわけないか。入ってないし。
「拒否権ってないですかね? 自分知らなかったですし」
「そうは言ってもなぁ。生徒会の人手不足は前々かららしくてな。去年の生徒総会で決まってるんだよ」
「そんな大事なことをロインで共有しないでください」
「そりゃそうだ。けど、一応先生たちにも言ってもらってたはずなんだけど」
「……」
うちの先生を思い出す。……駄目だあの人なら忘れてる。
「まあそんな難しいこと頼むつもりはないからさ。来週今年度の行事についての話し合いするから、とりあえず来てくれよ」
「とりあえずって……」
「いいからいいから。詳しい時間とかはあとで連絡するからさ。あ、ロインのフレンド交換しとこうぜ。楽だしさ」
「……てないです」
「ん? なんて?」
「入れてないです」
「……へ?」
間の抜けた顔で聞き返される。だってしょうがないじゃん、使う機会ないんだもん。スマホの持ち込みが許されてる高校に来たというのに、ロインの交換を申し入れられたのはこれが初めてだ。




