第18話 ボウリング場
「っと、待たせたな! みんな来てるか?」
「おはー! ごめんねー遅れちった!」
悪びれもしないで挨拶してきたのは、5分遅れの湊と莉弧。妃奈に言われて覚悟していたので驚きはないが、俺との温度感の違いを感じる。俺が何時間前に来たと思ってるんだ。いくらなんでも早すぎる? うーんその通り。
「じゃ、さっそく行こうぜ!」
「それはいいのですが、結局どこに行くんですか?」
「あれ、言ってなかったか?」
言ってない。妃奈のため息を見るに、いつも通りらしい。
「今日行くのは、ボウリングだ!」
というわけでボウリング場にやってきた。何気に初めてである。
「とりあえず一周分でよさそうだな。終わったらどっか飯に行くとして……さ、みんなは準備しといてくれ。会計はあとで割り勘な」
湊が代表して受付してくれている間、俺たちはボウリング用の靴に履き替えることになった。
「てか、なんで靴替えるんだ?」
「あえて少し滑るようにすることで足への負担を軽くすためらしいですよ」
「えぇ……独り言のつもりだったのに何で答えが返ってくるんだよ」
「たまたま知ってただけです。あとはまあ清掃が楽なる、とかじゃないですか?」
慣れない靴に手間取っていると、すでに吐き終えたらしい妃奈がやってきた。と思いきや俺の前をスルーし、及川さんのほうに向かう。
「及川さん、うまく履けないのでしたら手伝いますよ」
「宇治浦道さん? ええ、助かります」
「いえいえ、気にしないでください」
……百合百合しいのもいいが、できればこっちも手伝ってくれると助か、あ、嘘です。自分でやります。男の靴の履き替えとか手伝いたいわけないですよね。すみません。
「いや、心の中の独り言もたいがいイタいな……」
「あれ、よるっちどしたー? 履けないのー?」
「え?」
思わず顔を上げる。と同時、目の前に顔が写り込む。誰なのか一瞬判断しかね、すぐに莉弧だということに気づく。
突然の急接近に、思わず心臓が跳ねた。
「あ、ああ、いや、ちょっと分からなくて」
「なーにー初めて? ならしゃーないっしょ。えっとねー、ここ外して緩めてからー」
ちょ、ちょっと待って⁉ 何この香り。え、シャンプー? 香水? な、なんかだいぶ強めのフローラル系の香りが鼻を刺激するんですけど⁉ あれ、莉弧ってこんな匂い強いタイプだったか?
ナウい感じだと思ったはいたけど今の女子高生ってこういうものなのか?……あれ、ナウいって死語じゃね?
「っと、どう、きつくない?」
「え? あ、ああ、大丈夫、です。ありがとうございます」
「んーんー気にしないでー! よしっ、ボール選んで来よー!」
気づけば靴を履けていた。いや、ほんとに。手際いいし、何よりなんか、面倒見良いんだな莉弧って。
第一印象崩壊の瞬間であった。




