第17話 コーディネイト
もう正直満足だった。世間話をはさみつつの、約2時間のお散歩。歩き疲れたっていうのもあるけど、及川さんと話せただけで充実感があった。このまま解散したってかまわない。
「及川さん、乙崎君、おはようございます。2人ともお早いですね」
が、そういうわけにもいかないらしい。
11時10分前、駅に戻ってきたところ、ちょうど妃奈が改札から出るところだった。人通りもそこそこある中妃奈だとすぐに分かったのは、小柄がむしろ目立ったからだろうか。
「宇都羅道さん、おはようございます」
「……おはよう、であってるよな?」
「あー、どうでしょう。こんにちはでもいい時間ですね」
と、妃奈は腕時計を見た。ベルトが革製の、時計部分も小さいもの。全体的にブロンズカラーで、落ち着いた印象があって妃奈に似合ってる。……妃奈の外見で評価できるのはこれくらい。服も、さすが気を使ってるなぁ、くらいは分かるけどそれ止まり。俺じゃこれで限界。
あと、俺が確かめたかったのはおはようかこんにちはか、ではなく挨拶の内容についてだ。ほとんど挨拶なんてしたことないからどう挨拶するのが正解か分からんって話をしてるんだ。自慢にもならないけどな!
「それで? 早迫さんと莉弧ちゃんはまだですか?」
「お見掛けしてはないですね」
「そうですか。まあ、いつものことです。多分時間通りか、ちょっと遅刻してきますよ。あの2人、時間にルーズですから」
はぁ、とため息交じりに妃奈は言う。もしかすると、普段から悩まされているのかもしれない。
苦労してるんだな、と思ってみていると、顔を上げた妃奈と目が合った。どうかしたのだろうか。見ていると、妃奈が近づいてきた。
近づけば近づくほど、つくづく小柄だなと思う。140cmもなさそう。頭1個分どころじゃない差がある。なので、必然的に見上げられる形になる。そこから背伸びもされて、口を寄せられた。
……。…………? ……え、何この状況。なんかすっごい見られてる。妃奈に執拗にみられてる。全身くまなく見られてる。え、怖いんだけど。怖すぎて声も出ないんだけど。
「思っていたよりも壊滅的じゃないですね。及第点です」
「え? 何の評価?」
「服装ですね。てっきりもっと酷いものかと。褒めてあげます」
「う、嬉しくねぇ……」
実際嬉しくない。選んだのほとんど母さんだし。
「それに比べて及川さんはさすがですね。とてもお綺麗です」
「お褒めにあずかり光栄です。情報収集と手入れは欠かせていないので」
「もしよろしければ使ってる雑誌とか、トリートメントやスキンケアグッズを教えてくれませんか? ぜひ参考にしたいんです」
「もちろんいいですよ。後ほどロインでお伝えしますね」
「ありがとうございます」
い、言いたいことだけ言って及川さんのほう行きやがった……。
こうして、結局俺はあぶれてしまう運命なんだな、と再確認したのだった。




