第15話 待ち合わせ
待ち合わせ、という言葉をご存じだろうか。俺が今日の日記をつけるならそう題をつけること間違いないだろう。なぜか? それは、俺が今日待ち合わせについて真剣に考え、考察したからだ。
というのも話は簡単。昨日湊から来たロインに前向きな返事――内容はあえて伏せさせてもらう――をし、待ち合わせ場所と時間の連絡を受けた。及川さんも来るという確定情報の取得もでき、上機嫌でいたのだが問題発生。
あれ? 誰かに見せられるような私服、持ってたっけ?
というわけで急遽緊急家族会議。防災訓練張りの真剣さで会議は約1時間に渡り――主に俺に友達ができたことへの歓喜や賞賛(普通にやめてほしい。そもそもまだ友達ではない)――結果として父の服を拝借し、母と朝紗がコーディネートするということになった。頼もしい仲間がいてよかったと心の底から思う。
あと、一応てるてる坊主も一緒に作ってくれた。なおさすがに千羽鶴は勘弁願った。4人で作ってたら普通に夜が明ける。
で、今朝。
「そういえばさ、朝紗」
「んー?」
「11時集合って言われたら何時に着けばいいと思う?」
「えー? 5分前とか?」
アイス片手にマンガ読んでる朝紗は適当にそう答える。
確かに一理ある。5分前行動は学校でも言われ続けていたことだ。しかし、それで俺が誰よりも遅く到着したら? 正直俺を待つ時間なんて無駄なので、みんな俺を忘れて出発してしまうかもしれない。だから残念ながら却下だ。
「ねえに、夜瑠、これ次の巻どこ?」
「棚の同じとこにあるだろ?」
「いや、次の巻だけ抜けてる」
「あ? ああ、じゃあ親父の部屋だ。前貸した気がする」
「んー」
てか何気にあいつ無断で俺の部屋入ってたな。今更気にしもしなけどもうちょっとプライバシーを尊重してほしい。
「めんどくさいしもう行くか」
現在時刻は9時。だとしたら朝紗は早くからアイス食べ過ぎてるなと思いつつ、俺は集合場所に向けて出発するのだった。
そして今に至る。
「……早すぎた」
現在時刻は9時30分。どう考えても早すぎである。どうして俺は集合場所が一駅隣なのに向かうのに2時間以上も必要だと思ったのだろうか。普通にバカである。
「ま、まあ遅刻するよりましだし? 家にいてもどうせやることなかったし?」
ここに来たとこで別にやることはない。
……独り言にセルフ突込みとか惨めすぎるだろ。マンホールにでも飛び込もうかな。
「あら? 乙崎さんじゃないですか?」
「……え? あ、俺?」
乙崎さん、呼ばれてますよー、なんて考えてしまった。普通に俺だった。……俺?
2段階認証ののち呼ばれているのが俺だと気づいて声のするほうを見る。
「よかった、乙崎さんですね。人違いかと思ってしまいました」
「お、及川さん?」
及川さんがどうしてここに? なんだこの可愛さ。いや同じ場所に集合するんだからいて普通か。にしても私服のセンスいいな。洋服なのが意外だけど。というか早すぎない? まあ制服も洋風だしスマホは持ってたから全く予想外ってわけでもないけど。というか俺のこと覚えててくれたんだ。めっちゃうれしい。
……じゃなくて!
「お、おはよう及川さん。早いね?」
「はい。今日もお散歩をしていました。のどが渇いて、飲み物を買おうと戻ってきたんですけど、見知った顔を見かけましたから」
及川さんが指さしたのはコンビニだ。及川さんもコンビニで買い物するんだぁ、って感想はさすがにおかしいだろうか。
「けど、早いで言ったら乙崎さんもお早いんですね」
「お、俺も、お散歩をしよう、かと」
「まあ、奇遇、ってやつですね。よければご一緒しませんか?」
……早集合は100億の徳。そんなことわざはないが、ふと、そんな言葉が頭をよぎった。




