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黄昏の国の何でも屋 ー古代遺産に刻まれた夢ー  作者: かみやまあおい
第一章

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第8話:廃洋館へようこそ

数日後。アッシュとシエルの事務所には、平和な日常が戻っていた。


「なあ、シエル。俺の懐がそろそろ底をつきそうなんだけど、次の依頼ってないのか?」


アッシュは、空になった財布の中を覗き込みながら、ソファに寝そべっていた。


「あんたのお金がないのは食事に使いすぎなだけでしょ。もっと計画的に使いなさいよ。」

「そんな事言ったって俺の筋肉は町の平和を守るための資本なんだ。シエルだって守ってもらってるだろ? 見ろよ、この上腕二頭筋!」


アッシュは自慢げに自分の右腕を見せる。それを見てシエルはため息をつく。


「はぁ……こんなんだから財布がスッカラカンになるのよ……これじゃあ将来が心配になるわ……」

「ん? なんか言ったか?」

「何でもないわよ。」


そんな話をしているとトントンと扉をノックする音がした。

シエルが立ち上がり扉を開けると、そこには一人の若い執事風の男が立っていた。


「あら? どちら様ですか?」

「失礼。何でも屋はこちらでよろしいでしょうか。」


客が来た、アッシュの目が光り飛び起きる。

「何でも屋はこちらです! お困り事があればなんでも解決してみせましょう! それでご用件は何でしょう!?」


勢いよく男に迫るアッシュをシエルが横から叩く。


「落ち着け、この筋肉バカ。失礼しました。よろしければ中にどうぞ。」


シエルは最高の営業スマイルを見せて男を中へと招き入れたのだった。


「それでご用件はなんでしょうか。」


男にお茶を出すとシエルは向かい側のソファに座る。


「私はこの町に住みますフランク伯爵に仕えております。今回は伯爵の依頼でこちらに参りました。」


フランク伯爵、二人も知っているほどの有名人である。

この町の端にある巨大な洋館、そこは町の観光名所の一つとして外側まで案内されるぐらいの巨大な建物である。


「伯爵が依頼だなんて一体どんな依頼ですか?」


冷静を装っているがシエルの目が輝いているのがアッシュには見て取れた。


「実はこの町の外れにある、古い洋館の調査をお願いしたいというのが今回の依頼になります。」

「古い洋館って……あーあのお化け屋敷か。」


アッシュが反応した古い洋館とは、フランク伯爵の屋敷とは正反対にある、いつ誰が建てたか分からない建物だ。

町の人も管理を誰がしているのかは知らず、子供たちが夏になると肝試しと称して忍び込もうとする。


「あの洋館は実はフランク伯爵の家系の方が建てたものになります。そこについてなのですが、最近になりまして不気味な声や、奇妙な光が見えるという報告が相次いでいるのです。」

「なるほど。大体見えてきました。伯爵としてはそこが荒らされると何か困る事があるって事ですね?」


シエルが言うと男がピクリと反応する。


「勘が鋭いですね。ですが、あまり詮索はなさらないでいただきたい。」

「なるほど。面白そうな依頼じゃないか。ただ伯爵の依頼となると報酬もそれなりに出してもらうぜ?」


「承知しております。伯爵はその洋館にある時計の部品を好きにしてもらって構わないとおっしゃられております。」

「時計の部品だって?」


アッシュが身を乗り出す。


「どういう事だ? 報酬が金じゃないのかよ。」


アッシュは、報酬が金ではないことに不満を露わにした。


「アッシュ、落ち着きなさい。フランク伯爵がそう言うってことは、きっとその時計の部品に何か価値があるはずよ。」


シエルの言葉に、アッシュは少しだけ興味を示す。


「非常に聡明なお嬢さんですね。感服しました。仰られる通りその時計は古代の遺物を使って作られたものになります。部品といえども売却すればそれなりの金額になるかと。」

「あーなるほど……」


アッシュは時計塔の事件を思い出した。確か小さい部品は高く売れると言う話だった。


「分かりました。その依頼受けさせていただきます。」

「よかった。それでは建物に関する資料はこちらになります。ご確認していただき、調査を進めてください。」


そう言うと男は立ち上がり建物を出ていった。


「それで、洋館ってどんななんだ?」


シエルは、先程もらった資料を広げながら、アッシュに説明を始めた。


「あそこの屋敷に住んでいた人はかつて古代技術を研究していたみたい。でも、何らかの理由で屋敷は廃墟となり、誰も住まなくなったのね。だから屋敷の中には、まだ古代技術の遺物が残っている可能性が高いわ。」

「つまり、お前はそれが目当てなんだな?」

「当たり前じゃない。古代技術の遺物なんて、そう簡単に見つかるものじゃないわ。それに、フランク伯爵が自分達でなんとかせずにわざわざ私たちに依頼してくるなんて、よほどの理由があるはずよ。」

「理由か……確かに何かあるかもしれないな……」


アッシュはソファから立ち上がる。


「まあやってみるか。どうせ次の依頼が来るまで、暇なんだしな。」


こうして、二人は新しい依頼を受けることになった。



翌日、アッシュとシエルは町外れの古い洋館へと向かった。

鬱蒼と茂る木々に囲まれた屋敷は、昼間だというのに薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせている。

腐りかけた木製の門は、今にも崩れ落ちそうだった。


「おいおい、なんだか本当に不気味な洋館だな。本当にここに入るのか?」


アッシュは、洋館の門の前で立ち止まり、不安そうな顔でシエルに尋ねた。


「何を言ってるのよ、アッシュ。大丈夫よ。まさか本当に幽霊がいるとでも思ってるの?」


シエルはそうは言ったものの、その声はどこか強がっているようにも聞こえた。


「わかったわかった。シエルのいう事には従うさ。でも、万が一幽霊でも出たら、お前が最初に突撃しろよ。」


アッシュがそう冗談を言うと、シエルは「ばか言わないで」と鋭く突っ返す。


「幽霊なんて非科学的な存在、信じているわけないでしょう。それに、私を置いていったあんたの体が錆びつかないように、先に進んでくれないかしら。」


二人は洋館の中へと足を踏み入れた。

中に入ると、埃っぽい空気が二人を包み込む。

窓はすべて板で覆われ、室内は真っ暗だった。


「懐中電灯、持ってきてよかったな。」


アッシュが懐中電灯を取り出すと、あたりを照らしながら進んでいく。

さすがに誰も手入れをしなくなってからしばらく経つだけあって中の様子は酷い有様だ。


その時、アッシュが何かが転がっているのを見つけた。それは、古い木製のドールだった。


「なんだ、これ。人形か?」


アッシュがドールを拾い上げようとすると、ドールが、カタカタと不気味な音を立てながら、アッシュの手から滑り落ちた。

そしてまるで生きているかのように、よちよちと走り出したのだ。


「うわっ!」

「ちょっと何!?」


シエルは恐怖のあまりアッシュに抱きつく。


「離せシエル! あの人形なんだか分からないのか!?」

「え……? あ、えっと多分古代技術にあった自動人形だと思うわ……」

「よし、あいつを追いかければ何か分かるかもしれないな。いくぞシエル!」

「わ、分かったわ。行きましょう!」


二人はドールを追いかけて走り出した。

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